この度、歴史科学協議会は、2006年4月28日の政府与党による「教育基本法改正案」の提出に対し、以下の声明を採択致しました。



声明:「国家による教育の統制を強化する教育基本法『改悪』案の廃案を求める」

  去る4月28日、政府・与党は、「教育基本法改正案」を閣議決定し、国会に提出した。

  1947年に制定された現行教育基本法は、戦前の国家主義的教育に対する反省にたって、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期」し、日本国憲法に即してわが国の教育の基本原理を明記したきわめて重要な法律である。しかし、このような教育の根幹に関わる法律の「改正」を企図しているにもかかわらず、同法案は、国民の目に触れることのない密室審議のなかで作成され、かつ政党間の小手先の修正に対応し、個人の自由や尊厳を軽視(ないし無視)して再び国家のための教育に転換しようとしている。

  そのことは、現行第1条に掲げられた「真理と正義を愛し」「個人の価値をたっとび」「自主的精神にみちた」といった重要な規定が削除されているばかりか、第2条が「教育の方針」から「教育の目標」に変えられ、そのなかにおいては、「伝統と文化」の尊重や、「我が国と郷土を愛する」といった「徳目」が、身に着けるべき「態度」として求められていることからも明らかである。

  また、同法案は、「教育の機会均等」に関しては、「能力に応じた教育」を打ち出すことで公教育の能力的・格差的再編をめざし、「社会教育」についても「個人の要望や社会の要請にこたえる」とすることで「受益者負担」を求めていることからもわかるように、公教育の性格を放棄して、理不尽な競争原理を導入するものとなっている。

  さらに同法案の問題は、第17条が新たに「教育振興基本計画」を掲げている点にも見て取れる。これは、国家戦略として科学技術立国をめざす政府の方針とも符合して、政府が教育の中身を定めてその達成を求めていくものであり、教育の支配・統制を強めるものといわざるをえない。

  私たちは、このように歴史を顧みることなく国家統制を強化し、現在の新自由主義的改革を教育に持ち込もうとする政府・与党の「教育基本法改正案」の廃案を強く求める。

          2006年5月29日

          歴史科学協議会全国委員会

                                   





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