この度、私たち歴史学関連諸学会は、現在国会で審議中の「教育基本法「改正」案」の廃案を求め、下記の共同声明を出しましたので、お知らせ致します。
                                                            2006年12月1日

     声明「教育基本法「改正」案の参議院における廃案を求める歴史学関連学会の共同アピール」


先の国会で継続審議となった教育基本法「改正」案は、11月16日衆議院本会議で強行採決され、翌日参議院で審議入りした。私たち歴史学関連諸学会は、歴史研究・教育に関わる学会として、以下の緊急アピールを発表するものである。

政府・与党は、現行の教育基本法の「改正」を、その必要性を明確に説明できないままに今国会で成立させようとしている。政府は、現在の教育現場にあるいじめなどのさまざまな問題を「改正」の理由としているが、現在の教育の抱えている問題は、むしろ教育基本法の精神が貫徹していないことに起因すると考える。教育基本法は、アジア・太平洋戦争の反省の上に立ち、日本国憲法とともに、民主主義と平和を基本理念に掲げて日本の教育の大きなよりどころとなってきた。この「教育の憲法」ともいえる教育基本法を、充分な議論もないままに拙速に「改正」することは許されない。

政府・与党の「改正」案は、伝統・文化の尊重や国・郷土を愛する態度を強制するものとなっている。現行の教育基本法は、戦前の「教育勅語」が愛国心を称揚するなかで、日本が他国・他地域に対する侵略と戦争の道を歩んだことへの深い反省のもとに成立した。日本の歩んだ歴史を想起するならば、「伝統」「文化」や愛国心を無条件で教育の中心に据えることは重大な問題であるといわざるを得ない。

また、「改正」案は、国による評価のもと、競争的な教育を導入しようとするが、これによって教育の機会均等が損なわれ、教育格差が拡大することが危惧される。加えて「改正」案は、「全体」に対する教育の責任を明記した文言を削除するなど、国および地方行政による教育の統制をいっそう強める危険性をもつものとなっている。さらに、大学が「社会の発展に寄与する」ことを目的とした新設条項は、「発展」の名のもとに、学問の自由への介入が増す危険性をはらんでいる。

歴史学関連諸学会は、拙速に教育基本法を「改正」しようとする現在の動きに大きな危惧を抱くものであり、充分な審議がつくされていない教育基本法「改正」案を参議院において廃案とすることを強く求める。
                                                                      2006年12月1日

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