『歴史評論』2024年9月号(第893)/ Historical Journal(REKISHI HYŌRON) September 2024 vol.893

特集/慰霊と顕彰から考える日本の近現代 “Memorializing and Honoring the War Dead in Modern Japan ”

定価 1,045円  


 2024年現在も連日「戦争」に関する報道が止まず、その犠牲者についても否応なく見聞きする日々です。そこには戦闘に巻き込まれる無数の市民だけでなく、戦場で命を落とす幾多の兵士がいます。国家の名の下に行われた戦争において死んだ兵士は、国家によって弔われてきました。本誌では以前にも「戦死者をどう弔ってきたか」という特集を組み、戦死・戦没者の弔いを検証しました(628号)。それから二〇年余りが経ち、日本における戦死・戦没者の慰霊のあり方も変化し、戦後期間が長くなることで遺族のみならず、直接的な関わりを持たない人びとの意識も変わってきています。
 戦争に対する意識も変化しつつある現在、改めて「国のために没した人びと」のありようを考えることが必要なのではないでしょうか。そのためには慰霊や顕彰の対象になるのは誰なのか、ということも問いなおす必要があるでしょう。そして、家族を失った遺族の活動、または地域社会での展開、旧植民地での歴史認識、今なお続く遺骨収集からも分かるように現在進行形の事象でもあります。
 本特集では戦死・戦没者の弔いを「慰霊と顕彰」という視点から位置付けていくことで、近代日本の戦争に対する意識を改めて検証し、歴史学的に捉えるために多彩な論考を用意しました。戦争の遺したものを改めて考えることで、近代だけでなく現在を見つめ直したいと思います。いまだ戦争が継続している世界のなかで、死者の弔いという観点から、私たちもまた戦争とは無関係ではないと考えるきっかけになることを望みます。(編集委員会)

  *  特集にあたって 編集委員会
論   文 八甲田山雪中行軍遭難事件遭難者の慰霊と顕彰
Commemoration and Honoring of Soldiers Who Perished during the Disastrous Winter Mountaineering on Mt. Hakkoda in 1902
丸山泰明
MARUYAMA Yasuaki
論   文 「戦没者慰霊」の地域史 
Local History of “Memorial Service of the War Dead”
白川哲夫
SHIRAKAWA Tetsuo
論   文 「戦没者」の二重性と戦後日本
Duality in the Commemoration of the War Dead in Postwar Japan
今井勇
IMAI Takeshi
論   文 朝鮮人特攻隊員の表象と顕彰
Representation and Commemoration of Korean Kamikaze Pilots
権学俊
KWON Hakjun
論   文 戦没者遺骨収集と慰霊の戦後
Recovery and Commemoration of Remains of Japanese War Dead Abroad after the Asia-Pacific War.
浜井和史
HAMAI Kazufumi
書   評 田辺旬著『戦死者たちの源平合戦』
樋口州男
私の歴史研究 中国古代国家史研究にこだわり続けて(下)
太田幸男
〈聞き手〉飯尾秀幸・小嶋茂稔
〈記録〉多田麻希子・福島大我
文化の窓 前橋市における今井清一文庫の公開について
大西比呂志
書   評 川畑勝久著『古代祭祀の伝承と基盤』
杉田建斗
書   評 シャルロッテ・フォン・ヴェアシュア著『モノと権威の東アジア交流史』
浜田久美子
書   評 高野信治著『藩領社会と武士意識』 
根本みなみ
書   評 佐藤美弥著『創宇社建築会の時代』
上田誠二
紹   介 永岑三千輝著『アウシュヴィッツへの道』
土肥有理
 

戻る