『歴史評論』2024年3月号(第887)/ Historical Journal(REKISHI HYŌRON) March 2024 vol.887

特集/ジェンダー主流化と歴史教育 “Gender Mainstreaming and History Education ”

定価 1,045円  


 今日、「ジェンダー」という言葉は政治や経済など様々な局面で使われ、今や「ジェンダー主流化」は国際的な潮流となりました。かつてジェンダー・バックラッシュが吹き荒れたことを考えれば隔世の感があります。また、これまでジェンダー視点から歴史教育を見直す試みも蓄積されてきました。
 しかし、翻って歴史教育の現場でジェンダー概念やジェンダー史はどれほど意識され、実践されているでしょうか。歴史総合、世界史/日本史探究ではジェンダー史を意識した記述は増えましたが、その取り上げ方には検討の余地もあります。また教育の現場では、いまだ男性中心的な教科書への批判を認識しつつも、ではどのようにジェンダー史を組み込めばよいか、戸惑いの声も聞かれます。こうした点を念頭に、ジェンダー史の観点から歴史教育に取り組んでいる方々から、ご自身の教育実践、そこから浮き彫りとなった歴史教育をめぐる課題について、ご寄稿いただきました。
 また、歴史教育の実践にあたって見落としてはならないジェンダー主流化の現状を批判的に分析した論考を書いていただきました。ジェンダー主流化を「寿(ことほ)ぐ」のみでは危うい現状が説得的に論じられています。
 ジェンダー概念は、男女の区分を本質化せず、歴史的に構築されたものとして提起するものです。本特集を通して、ジェンダー史と歴史教育の現状、そして、ジェンダー史の意義と今後の課題を共有していきたいと思います。(編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
論   文 ジェンダー・歴史・権力 ―「家事労働」を通して
Gender, History, Power: from the Perspective of 'Domestic Labor'
小田原琳
ODAWARA Rin
論   文 大学における「歴史」教育とジェンダー史実践
The Challenge of the History Education through Gender Perspective
長志珠絵
OSA Shizue
論   文 社会史とジェンダー史の対話
Dialogue between Social History and Gender History
貴堂嘉之
KIDO Yoshiyuki
論   文 ジェンダーいまだ主流化せず ―ある高校教師が見た日本史探究
Gender Isn't yet Mainstreamed in History Education in Japan
野村育世
NOMURA Ikuyo
論   文 高校でのジェンダー史実践 ―日本史教育の「歪み」を正す
Gender History Practices in High Schools 
前川直哉
MAEKAWA Naoya
歴史の眼 ジェンダー主流化再考 ―グローバル・ガバナンスの中のフェミニスト知
Rethinking Gender Mainstreaming: Feminist Knowledge in Global Governance 
本山央子
MOTOYAMA Hisako
私の歴史研究 日本古代史研究から東アジア史、ユーラシア史研究へ(下)
鈴木靖民
〈聞き手〉森田喜久男・河野保博・宮瀧交二

歴史の眼 水俣「百間排水口」樋門撤去問題をめぐって
丹波博紀
書   評 西本昌弘著『平安前期の政変と皇位継承』
桜田真理絵
書   評 木村聡『日本海軍連合艦隊の研究』
木村美幸
書   評 後藤啓倫著『関東軍と満洲駐兵問題』
山口一樹
   *  二〇二四年度 歴史科学協議会総会報告

 

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