『歴史評論』2024年2月号(第886)/ Historical Journal(REKISHI HYŌRON) February 2024 vol.886

特集/律令官人制研究の新展開 “Recent Developments in the Studies of Ritsuryo Bureaucracy”

定価 1,045円  


 いわゆる律令国家は天皇を頂点とし、大臣以下の貴族や官人がそれぞれの官司でその職務を全うすることで支えられていました。これを律令官人制と呼びます。
 律令官人制の研究には、官人の勤務評定を構造的に解明した野村忠夫氏の先駆的な業績がありますが、そもそも官人とは中央官司所属の人々のみならず、女官や地方官衙の末端の人々に至るまで、多岐にわたるものです。今日的な意味での官僚より広い階層と考えられる官人層については、出土木簡からも豊富な知見を得ることができ、近年地方社会を多角的にとらえる研究が進展しています。
 皆さんは官人について、中央集権体制としての律令国家を運営する実直な人々を思い浮かべるかもしれません。しかし、仮病などで欠勤する官人が一定数存在しており、儀式での代返行為も横行していたほか、平安時代中期の有能な公卿とされる藤原実資でさえも二日酔いで欠勤しています。もちろん、勤勉な官人も存在していましたが、様々な人々が活動していたのが、日本の古代国家の実態だったといえるでしょう。
 本特集では、律令官人制研究においてどのようなことが明らかとなり、現在いかなる論点があるのかを念頭に、論考を用意しました。多様な官人層がいかなる論理で成り立っているのか、理解が深まる内容になったと思います。
 律令官人制を理解することは、日本の古代国家の実態把握につながります。その世界に今から入っていきましょう。(編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
論   文 律令官人制をめぐる諸問題 ―サボる官人を中心に―
Problems of the Ritsuryo Bureaucracy in Ancient Japan
上村正裕
UEMURA Masahiro
論   文 律令官人と儀式 ―七・八世紀の饗宴儀礼を中心に―
The Ritsuryo Officials and the Court Ceremonies 
志村佳名子
SHIMURA Kanako
論   文 律令官人制と地方社会
Expansion of the Ritsuryo Bureaucracy to the Local Society
十川陽一
SOGAWA Yoichi
論   文 新出女官考課木簡の意義
New Discoveries of Wooden Documents regarding the Evaluation of Female Official
伊集院葉子
IJŪIN Yōko
論   文 平安時代の技能官人 ―「諸道」を中心に―
Technical Officials in Heian-Era 
高田義人
TAKADA Yoshihito
歴史のひろば 古代官人制の新書を読む
Reading Shinsho Books (Paperback Series) on Ancient Bureaucracy 
森田喜久男
MORITA Kikuo
私の歴史研究 日本古代史研究から東アジア史、ユーラシア史研究へ(上)
鈴木靖民
〈聞き手〉森田喜久男・河野保博・宮瀧交二

書   評 佐藤亜聖著『中世都市奈良の考古学的研究』
前川佳代
書   評 伊藤俊介著『近代朝鮮の甲午改革と王権・警察・民衆』
大日方純夫
書   評 田中美佳著『朝鮮出版文化の誕生』
高橋 梓
書   評 サラ・ロレンツィーニ著/三須卓也・山本健訳『グローバル開発史』
奥田俊介
 

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