『歴史評論』2024年1月号(第885)/ Historical Journal(REKISHI HYŌRON) January 2024 vol.885

特集/〈紫式部〉を歴史から読み解く “Understanding “Murasaki Shikibu” from Japanese History”

定価 1,045円  


 2024年のNHK大河ドラマは「光る君へ」。大河ドラマ史上二番目に古い時代を扱うこと、女性が主人公であること、何より、あの『源氏物語』を書いた紫式部の人生を追うということで、注目が集まっています。『歴史評論』の読者にも、楽しみにしている方が多いのではないでしょうか。
 紫式部は、日本では小学六年生で習う人物です。『源氏物語』があまりに有名なので意外かもしれませんが、ほとんど歴史資料に残っておらず、実態がよくわからない女性です。ドラマでは藤原道長との恋模様が描かれるようですが、紫式部の人生はもちろん、道長ありきではありません。彼女の出身階層、親族や家族、女房という職業と仲間、仕えた后や天皇、そして摂関期という藤原氏全盛の時代になぜ「源氏」を描いたのかなど、彼女を知るための手掛かりは、道長以外にもたくさん見出せます。
 一方、紫式部をめぐる史実とはかけ離れた説話や、『源氏物語』から派生した儀礼や芸能も、彼女の死後に現れます。これらを非歴史的と切り捨てることなく、人々が紫式部と『源氏物語』を、それぞれの時代の文脈で受け止めようともがき続けた、もうひとつの歴史の姿と捉えるべきでしょう。
 紫式部に対する最新の歴史研究の成果とともに、歴史が創り出した紫式部のイメージまで含めて扱いたいと、この特集を企画しました。注目の「源氏絵」デジタル研究の成果もお伝えできます。
 本特集が灯す光を頼りに、紫式部と『源氏物語』の世界へ、さあ参りましょう。(編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
論   文 紫式部と中宮彰子
Murasaki Shikibu and Fujiwara Syoshi
服藤早苗
FUKUTO Sanae
論   文 紫式部の一族
Murasaki Shikibu's Bloodline
樋口健太郎
HIGUCHI Kentaro
論   文 紫式部と宮廷の女性たち ―『紫式部日記』の策略
Murasaki Shikibu and Court Ladys 
本橋裕美
MOTOHASHI Hiromi
論   文 紫式部は「源氏イリュージョン」といかに向きあったか ―「究極」であるがゆえに「禁忌」―
How Did Murasaki Shikibu Deal with the Illusion of Genji? :A Taboo All the More Because of the Supremeness 
助川幸逸郎
SUKEGAWA Koichiro
論   文 紫式部と〈源氏供養〉
Murasaki Shikibu and Genji-Kuyo (Memorial)
小峯和明
KOMINE Kazuaki
論   文 〈紫式部像〉の流通と変容
The Circulation and Transformation of the Image of Murasaki Shikibu 
津島知明
TSUSHIMA Tomoaki
論   文 紫式部の人生をたどるには
How Can Trace the Life of Murasaki Shikibu? 
伴瀬明美
BANSE Akemi
歴史のひろば 源氏絵研究におけるAI・VR応用
AI and VR Applications to the Study of Genji Paintings 
稲本万里子
INAMOTO Mariko
座 談 会 映画『福田村事件』を観て
『歴史評論』
編集委員会有志

科学運動通信 緊急シンポジウム「歴史研究と著作権法―世田谷区史編纂問題から考える」参加記
宮瀧交二
書   評 菊池 勇夫 著『江戸時代の災害・飢饉・疫病』
海原亮
書   評 菊池一隆著『中国国民党特務と抗日戦争』
柴田哲雄
書   評 平良好利・高江洲昌哉編『戦後沖縄の政治と社会』
野添文彬
紹   介 スザンヌ・E・エヴァンス著/黒田学・清水貞夫監訳『障害者の安楽死計画とホロコースト』
土肥有理
紹   介 水口由紀子編『日本史のなかの埼玉県』
森田喜久男
  * 二〇二三年『歴史評論』総目次

※内容・タイトルは仮のものです。  

戻る