2023年から150年前、当時の政府から、西郷隆盛をはじめとする五人の参議が一斉に下野するという政治的事件がありました。現在、「明治六年の政変」ないし「征韓論政変」などと呼称されているこの政変は、かつては明治新政府の階級的性格を把握するための格好の事例として、研究が盛んに行われていました。関連して、政変の前提となる征韓論についても、1980年代から90年代はじめにかけて、西郷隆盛を征韓論者ではなく平和的交渉論者であったとする毛利敏彦氏と、それを全面否定する田村貞雄氏との間で激しい論争が展開され、学界を賑わせました(毛利・田村論争)。しかし、政権の階級的性格を把握するという問題関心自体が減退していくなかで、政変を正面から取り上げる研究は次第に少なくなり、その歴史的位置についても、明治前期を専門とする一部の研究者以外には捉えにくくなっていると
いうのが現状です。
そこで、本特集では、明治前期の政治・行政・軍事、あるいは、「征韓」言説の特徴やその歴史的位置についてこれまで検討を重ねてきた方々に、それぞれの問題関心から研究史を繙いていただき、「明治六年」という時期が日本の歴史上に有した位置や画期性について、議論していただきました。本特集を契機に、この政変に関する研究が再び活性化していくことを願ってやみません。ご味読ください。(編集委員会)
* | 特集にあたって | 編集委員会 |
論 文 | 維新史 研究における明治六年政変の意義と課題 Significance and Challenges of Studying Meiji 6 in Ishin-shi |
大庭裕介 OBA Yusuke |
論 文 | 「大久保政権」論の現在地 Current State of "the Okubo Regime" Studies |
小幡圭祐 OBATA Keisuke |
論 文 | 参議・省卿兼任制の導入過程 A Study on the Origin of Modern Japanese Cabinet System |
柏原宏紀 KASHIHARA Hiroki |
論 文 | 明治六年政変後の宮中と華族 The Imperial Court and the Nobility after the Coup of Meiji 6 |
久保正明 KUBO Masaaki |
論 文 | 明治六年政変と政軍関係の変容 The Meiji 6 Political Change and the Transformation of Political-military Relations |
大江洋代 OOE Hiroyo |
論 文 | 日朝関係からみた西郷隆盛の「征韓論」 Saigo Takamori's “SEIKANRON” from the Viewpoint of Japan-Korea Relations |
木村直也 KIMURA Naoya |
第57回大会準備号 | 歴史認識のポリティクス―地域・国家・市場―U
大会テーマの設定にあたって |
全国委員会
|
《第1日目》歴史学の現在と理論的課題 いま・ここを知るため史学史を顧みる |
小田中直樹
|
|
《第1日目》歴史学の現在と理論的課題 歴史実践とナラティブ・チェンジ ―非専門家とのパブリック・ヒストリー |
菅豊
|
|
《第2日目》歴史実践の現在と過去 観光公害と文化遺産 ―京都の伝統工芸に関わる史資料の現状と課題から徴 |
木立雅朗
|
|
《第2日目》歴史実践の現在と過去 動き始めた歴史教育改革の成果と課題 ―実践的考察に |
小川幸司
|
|
《第2日目》歴史実践の現在と過去 一九五〇年代前半の歴史学と大衆文化 ―国民的歴史学運動における紙芝居の実践を題材に動 |
高田雅士
|
|
紹 介 | 尹紫遠・宋恵媛著『越境の在日朝鮮人作家 尹紫遠の日記が伝えること』 |
原佑介 |
紹 介 | 藤永康政・松原宏之編著『「いま」を考えるアメリカ史』 |
黒岩漠 |
紹 介 | 中西竜也・増田知之編著『よくわかる中国史』 |
矢久保典良 |
* | 加盟組織の活動報告 |
|
* | 加盟組織の機関紙案内 |
|
* | 〈会告〉会費口座振替に関するお知らせ |