『歴史評論』2023年9月号(第881)/ Historical Journal(REKISHI HYŌRON) September 2023 vol.881

特集/関東大震災研究の論点と課題2023 “Issues and the Problems 2023 about Studies of the Great Kantō Earthquake ”

定価 1,045円  

 
 2023年は、関東大震災の発生から100年にあたります。1923年9月1日に発生したこの震災では、地震や直後の火災などによって約10万人が死亡・行方不明となりました。また、地震発生直後に流されたデマが原因で、多数の朝鮮人をはじめとして、中国人、地方出身の日本人、聴覚障がい者などの人々が殺害されたほか、大杉栄ら無政府主義者、社会主義者が官憲に殺害されました。自然災害・人災両面にわたる複合的な大規模災害だったことが、関東大震災の特徴と言えるでしょう。
 関東大震災をめぐる歴史研究においては、朝鮮人虐殺の実態を解明する研究が精力的かつ粘り強く続けられてきました。虐殺をめぐっては実態を隠蔽・過小評価しようとする修正主義的な動向が現在も続いており、それらに対抗していくためにも虐殺についての研究の重要性はますます高まっています。その一方、近年多発する大規模自然災害を背景として、虐殺事件とは別の側面から関東大震災に アプローチする研究も多く蓄積されてきており、関東大震災を多角的・複合的にとらえることが可能になってきています。
 本特集では関東大震災をめぐる現在の研究上の論点や、今後より深めるべき課題について、虐殺事件、災害史、政治外交史、震災復興、記憶史など各分野の最新の成果をもとにご紹介します。100年を迎えてもなお今日的な課題を私たちにつきつける関東大震災について、改めて考えていただければと思います。(編集委員会)

  *  特集にあたって 編集委員会
論  文 「関東大震災100年」と朝鮮人虐殺研究
‘The Centennial of the Great Kantō Earthquake’ and Korean Genocide Research
田中正敬
TANAKA Masataka
論  文 軍隊による朝鮮人虐殺 ―植民地戦争経験の蓄積という視点から―
Genocide of Korean People by Japanese Army: From the View of Experiences of the Colonial War
愼蒼宇
SHIN Chang U
論  文 関東大震災の被災者 ―生と死はどう把握されたか―
Victims of the Great Kantō Earthquake: How to Grasp Lives and Deaths   
北原糸子
KITAHARA Itoko
論  文 関東大震災の政治と外交 
The Politics and the Diplomacy of the Great Kantō Earthquake
土田宏成
TSUCHIDA Hiroshige
論  文 関東大震災と「帝都復興」  
The Great Kantō Earthquake and the Reconstruction of the Imperial Capital
伊藤匠
ITO Takumi
論  文 震災記憶とメディアの展開
Memories of the Disaster and the History of Mass Media 
水出幸輝
MIZUIDE Koki
書  評 下坂守著『中近世祇園社の研究』
三枝暁子
書  評 牧原成征著『日本近世の秩序形成』 
鈴木直樹
書  評 杉本史子著『絵図の史学』 
後藤敦史
書  評 藤田達生編著『歴史遺産が地方を拓く ―紀伊半島の創生』 
藤本清二郎
書  評 大豆生田稔著『戦前日本の小麦輸入』 
谷ヶ城秀吉
書  評 権学俊著『朝鮮人特攻隊員の表象』
キムユビ
金〔广+臾〕毘

紹  介 横山真一著『自由民権の家族史』 
飯塚彬
紹  介 荒敬・大日方悦夫・三輪泰史著『1945.8.13 長野空襲の真実』  
大岡聡
 

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