歴史総合が導入されて一年が経ちました。また、今年度から新科目である日本史探究、世界史探究も始まり、全国各地の教室で試行錯誤が続いています。そこでは新たに編まれた教科書がどのように活用されているのでしょうか。教室で学び合う教員と子どもたちの反応や声に、今まで以上に耳を傾ける必要はないでしょうか。
歴史総合は導入前から可能性や課題が議論されてきました。現代社会の諸課題について、自国史と世界史の枠組みを超えて子どもたちがみずから考え、向き合うために新設されたといえます。しかし、新型コロナ禍やロシア・ウクライナ戦争といったリアルタイムで生じている課題について、歴史総合はどの程度、対応できているでしょうか。今日、歴史総合の教科書や授業を多角的に検証し、科目のさらなる充実のために役立てることが求められています。
各論文では、歴史学の最新の研究成果、教科書叙述、歴史教育の実践の蓄積がどのように扱われているのかを検討するだけでなく、教員養成や地理総合・公共との連携、海外からみた歴史総合といった視点からも論じています。いずれも歴史学や歴史教育だけでなく、研究領域や国境を超えて議論を拡げ、続けていくためのものです。
歴史総合は、これまでにない新しい科目です。常に到達点と課題を洗い出してブラッシュアップしていく必要があるでしょう。その口火を切る役割を本特集号が担うことをめざします。（編集委員会）
| ＊ | 特集にあたって | 編集委員会 |
| 論 文 | 歴史に学ぶということ―「私たち」と資料 Learn from History: Historical Records for "Us" |
今野日出晴 KONNO Hideharu |
| 論 文 | 「問いを表現する」歴史総合の意義と課題 The Significance and Issues of Modern and Contemporary History: Focusing on “Expressing Questions” |
飯塚真吾 IIZUKA Shingo |
| 論 文 | 「歴史総合」と「地理総合」、「公共」の連携に関する考察 Considerations on Coordination among the Subjects of “Modern and Contemporary History”, “Geography”, and “Public” |
西尾理 NISHIO Osamu |
| 論 文 | 「歴史総合」から「日本史探究」「世界史探究」へ―豊かな現代史認識をめざして Towards Deeper Understanding of the Modern History through “Advanced Japanese History” and “Advanced World History” on the Basis of “Modern and Contemporary History” |
米山宏史 YONEYAMA Hirofumi |
| 論 文 | 東アジアにおける「歴史総合」 “Modern and Contemporary History” in East Asia |
朴中鉉 （翻訳 三橋広夫） PARK Joonghyun |
| 論 文 | 歴史総合の時代の教員養成 History Teacher Training in the Age of "Modern and Contemporary History" |
小嶋茂稔 KOJIMA Shigetoshi |
| 歴史のひろば | 「歴史総合」をめぐる論点と課題について On the Issues and Problems of “Modern and Contemporary History” |
河合美喜夫 KAWAI Mikio |
書 評 | 関根淳著『日本古代史書研究』 |
細井浩志 |
書 評 | 吉澤誠一郎監修／石川博樹・太田淳・太田信宏・小笠原弘幸・宮宅潔・四日市康博編著『論点・東洋史学』 |
桃木至朗 |
書 評 | 三谷博著『日本史のなかの「普遍」』 |
奈良勝司 |
書 評 | 林博史著『帝国主義国の軍隊と性』 |
永原陽子 |
書 評 | 高田雅士著『戦後日本の文化運動と歴史叙述』 |
成田龍一 |
声 明 | 安保三文書（「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」）の閣議決定の撤回を求める声明 |
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声 明 | 内閣府「日本学術会議の在り方についての方針」（二〇二二年十二月六日) の撤回（再考）を求める声明 |
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