『歴史評論』2023年4月号(第876)/ Historical Journal(REKISHI HYŌRON) April 2023 vol.876

特集/「監獄」研究の現在 “Prison Studies Today”

定価 1,045円  


 日本社会は、現在さまざまな司法問題に直面しています。五〇パーセントに迫る再犯率、少年法の改廃論、さらに「拘禁刑」の新設や死刑制度の存廃論など、まさに課題山積といった状況です。
 「監獄」は刑事施設として、近代社会で司法制度の中核を担ってきました。現代日本では刑務所・少年刑務所・拘置所に分かれています。受刑者や被告人とされた人びとを拘禁し、刑罰を執行する場として、「懲戒」や「矯正」の機能を果たしてきました。一方で、開放的処遇を重視し始めた欧米に対して、日本の「監獄」は厳格な隔離を原則とし、私たちの生活から切り離されてきた現実もあります。
 「監獄」をめぐっては、これまでさまざまな学問領域から光が当てられてきました。しかしそうした関心の高さに比べて、今日の「監獄」研究は同じ「監獄」を対象として論じながらも、領域ごとの成果をどのように総合して理解すればよいか、いまだはっきりとした統一像を結んでいない状況です。
 本特集では、思想史・歴史学・法制史・社会福祉史・文学を専攻する皆さんに、寄稿をお願いしました。各領域で進められてきた研究成果を共有しながら、「監獄」の歴史とそこに現れた問題を、領域横断的に考えるための視座を切り拓くことがねらいです。世界史の視点から、フランスをはじめ欧米の「監獄」にも注目しました。時代とともに目的が揺れ動いてきた「監獄」の歴史は、私たちの社会観や人間観を映し出す鏡でもあります。本特集をきっかけに、「監獄」問題をめぐる議論が深められることを望みます。(編集委員会)

 
   *  特集にあたって 編集委員会
論   文 「感化」と「懲戒」の監獄史
Education and Punishment in Prison History
繁田真爾
SHIGETA Shinji
論   文 自由刑の場としての「監獄」 
Prison as a Place for the Execution of Imprisonment
兒玉圭司
KODAMA Keiji
論   文 法からみた「監獄」  
Prisons from the Perspective of "Law" 
姫嶋瑞穂
HIMEJIMA Mizuho
論   文 明治期における子どもと監獄
Children Issues in Prisons During the Meiji Era
倉持史朗
KURAMOCHI Fumitoki
論   文 フランス近代監獄とわれわれ
Rethinking Nineteenth Century French Prisons 
梅澤礼
UMEZAWA Aya
歴史のひろば 日中韓女性史国際シンポジウム「東アジアのセクシュアリティ」を開催して
野村育世
科学運動通信 教科書シンポ参加記
小島辰仁
書   評 吉村武彦著『日本古代の政事と社会』 
三谷芳幸
書   評 吉川紗里矢著『江戸幕府の役職就任と文書管理』 
山本英貴
書   評 谷口裕信著『近代日本の地方行政と郡制』  
袁甲幸
書   評 大澤博明著『明治日本と日清開戦』
原田敬一
書   評 久野洋著『近代日本政治と犬養毅』  
桜井良樹
書   評 千住一・老川慶喜編著『帝国日本の観光』 
菅沼明正
紹   介 エドウィン・ブラック著・貴堂嘉之監訳・西川美樹訳『弱者に仕掛けた戦争』
小森真樹
紹   介 西村慎太郎著『『大字誌浪江町権現堂』のススメ』  
簗瀬大輔
紹   介 井上久士著『平頂山事件を考える』 
広中一成
 

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