『歴史評論』2023年3月号(第875)/ Historical Journal(REKISHI HYŌRON) March 2023 vol.875

特集/幕末史研究入門 “An Introduction to the Study of the Last Edo Period”

定価 1,045円  


 幕末は、日本の歴史の中でも、とりわけファンが多い時期の一つです。毎年、幕末史に関する読み物が数多く刊行されており、ドラマや漫画、アニメで、この時期を取り扱った作品も少なくありません。市民サークルや大学などの場で歴史を学ぼうとしている方々の中にも、それらエンターテインメント作品に触発され、幕末史を専門にしたいと考えている方が多く見られます。
 しかし、エンターテインメント作品の中で取り上げられた人物や組織、事件を、そのまま歴史研究の対象にしようとすると、史料の残存状況、あるいは、作品の中の理想像と現実とのギャップに苦しむといった事態が、しばしば生じます。また、幕末史に対する関心の高さが、結果として、前後の時代とのつながりを欠いた自己完結的な歴史像を生み出してしまう場合もあります。実際、ここ数十年の間に発表された、幕末史に関する精緻な実証研究の蓄積は、議論の争点をかえって見えにくくし、この時期を長年専門としている方以外が研究を行うのを困難にしているという実情があります。
 以上のような幕末史研究の現状に一石を投じるために、本特集を企画しました。各論文は、それぞれの分野の研究動向を平易に示しつつ、前後の時代との接続を強く意識した内容となっています。研究にこれから取り組む若い世代はもちろんのこと、幕末史を専門としない方々にも広く読まれ、幕末を考え・教える材料になることを期待します。(編集委員会)

  *  特集にあたって 編集委員会
論  文 幕末政治史研究(中央政局分析)入門
An Introduction to the Study of the Political History Research on the Late Edo Period
白石烈
SHIRAISHI Tsuyoshi
論  文 幕末政治史と藩研究
A Study on the Political History of the Late Tokugawa Shogunate and the Han System
宮下和幸
MIYASHITA Kazuyuki
論  文 幕末期外交・貿易・海防史研究入門
An Introduction to the Study of the History of Diplomacy, Trade, Coastal Defense in the Late Edo Period 
吉岡誠也
YOSHIOKA Seiya
論  文 志士草莽研究入門
An Introduction to the Study of Patriots of the Last Edo Period
岩立将史
IWATATE Masashi
論  文 幕末期の政治変動と思想
Political Changes and Ideologies in the Late Edo Period 
天野真志
AMANO Masashi
論  文 幕末の朝廷・公家社会研究の現状と課題 
The Current State and Issues of the Social Researches on the Imperial Court and the Court Nobility in the Last Edo Period
佐竹朋子
SATAKE Tomoko
書  評 須田努著『幕末社会』
小関悠一郎
         *

書  評 川岡勉編著『中世後期の守護と文書システム』   
藤井崇
書  評 吉田政博著『戦国期東国の宗教と社会』   
近藤祐介
書  評 高柳友彦著『温泉の経済史』  
齋藤邦明
書  評 謝花直美著『戦後沖縄と復興の「異音」』 
鳥山淳
書  評 折井美耶子著『地域女性史への道』 
柳原恵
紹  介 島根県古代文化センター編『出雲国風土記・地図・写本編』
武廣亮平
二〇二三年度 歴史科学協議会総会報告

声明/日本学術会議の独立性を否定する法案提出に反対する

 

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