私たちは普段の生活であまり意識することはありませんが、出生や死亡、または婚姻の場面などで「戸籍」というものを目にします。近年では婚姻による姓の選択を考える点からも注目されています。家族のかたちを規定し、さらに国家が人びとを管理する、その仕組みはどのようなものなのでしょうか。古代に導入された戸籍制度は日本列島の支配のあり方を変えたといっても過言ではありません。そして、現代においても戸籍制度はかたちを変えながら存在しており、私たちを規定しています。
そのため、戸籍制度がいかなるもので、どのように展開していったのか、古くから研究が進められ、特に古代史においては、家族のあり方や社会の組織編成、国家支配の特質を探るべく、数少ない戸籍史料をさまざまな視点で検討し、数多くの研究が蓄積されてきました。最近では古代社会の実像に迫るべく、人口統計学やジェンダー史の成果も取り込むなど新たな視点での検討もおこなわれ、古代の戸籍研究は新たな段階を迎えています。
そこで、本特集では近年開催された新古代史の会主催の古代戸籍に関するシンポジウムをもとに、戸籍研究の新たな動向を紹介します。考古学の成果をふまえた考察など、最新の成果を提示することで、戸籍史料からうかがえる古代史の基本的な事項を改めて考えたいと思います。そして、今につながる制度の再検討を通じて、私たちが抱える課題について歴史的な事象から考察するきっかけとなることを願います。 (編集委員会)
* | 特集にあたって | 編集委員会 |
論 文 | 古代戸籍研究の現状と可能性 Current Status and Possibilities of Ancient Household Register Research |
三舟隆之 MIFUNE Takayuki |
論 文 | 古代戸籍にみる戸主の任用原理―大宝二年御野国戸籍を中心に― Principles of Appointment of a Householder in Ancient Household Registers: Focusing on the Household Registers of Mino Province in the Year 702 |
田中禎昭 TANAKA Yoshiaki |
論 文 | 戸籍制度の展開 Development of Household Register System |
里舘翔大 SATODATE Shodai |
論 文 | 賑給における寡の検討 Considerations of Widows in Shingo System |
岡田康佑 OKADA Kosuke |
論 文 | 戸籍小論―造籍の社会的インパクト― A comment on Household Registers |
本庄総子 HONJO Fusako |
論 文 | 考古学による古代集落研究と戸籍 Archaeological Studies of Ancient Settlements and Household Registers |
道上祥武 MICHIGAMI Yoshitake |
紹 介 | 今津勝紀著『戸籍が語る古代の家族』 |
堀川徹 |
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書 評 | 松本政春著『律令国家軍制の構想と展開』 |
中尾浩康 |
書 評 | 木場貴俊著『怪異をつくる』 |
小田真裕 |
書 評 | 今村直樹・小関悠一郎編著『熊本藩からみた日本近世』 |
千葉拓真 |
書 評 | 酒井雅代著『近世日朝関係と対馬藩』 |
木村直也 |
書 評 | 大門正克・長谷川貴彦編著『「生きること」の問い方』 |
森明子 |
書 評 | 林采成著『東アジアのなかの満鉄』 |
老川慶喜 |
書 評 | 洪郁如著『誰の日本時代』 |
橋本恭子 |
書 評 | 吉澤文寿編著『日韓会談研究のフロンティア』 |
成田千尋 |
紹 介 | 鈴木一郎・宮瀧交二監修/ シンポジウム「新羅群の時代を探る」実行委員会編『武蔵国・新羅群の時代』 |
森田喜久男 |
紹 介 | 人間文化研究機構「歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業」監修/ 天野真志・後藤真編著『地域歴史文化継承ガイドブック』 |
三村昌司 |