学びの機会の多様化が進み、働きながら、また、定年退職後や子育てを終えた後に、学生時代とは違うかたちで歴史を学ぶ方々が増え続けています。生涯学習としての歴史学習・歴史研究です。数年程度に過ぎない学校での歴史学習とは異なり、こうした博物館・公民館やカルチャーセンターを主な舞台とする、生涯学習の場における歴史学習・歴史研究は、一〇年、二〇年といった長期間にわたって継続することも珍しくはありません。今後もその需要は減少するどころか、増加の一途をたどるのではないかとみられています。
本特集では、このような生涯学習の現場の実態をあらためて確認し、今後、私たちが共有するべき課題を整理しておきたいと考えました。特に、教員が授業というかたちで学習機会を提供している学校教育現場とは異なり、生涯学習の現場では、退職教員や学芸員、大学院生といった多様な立場の講師が中心になって市民の歴史学習をサポートしています。また、学校教育現場のために編まれた歴史教科書を用いる場合もあれば、書店に並ぶ「新書」をテキストにする例も少なくないようです。必要な講師の確保や、使用するテキストの選定等が大変重要な課題となっています。さらに、ますます緻密な実証・考察へと向かう歴史研究者の問題関心と、広い視野からの歴史像の把握を楽しみたいという学習者側の要望との乖離も言われて久しいところです。生涯学習の現場から届くさまざまな声をご傾聴ください。(編集委員会)
* | 歴史科学協議会第56回総会・大会案内 | |
* | 特集にあたって | 編集委員会 |
論 文 | 博物館・カルチャースクールにおける歴史学 Historical Studies in Museums and Culture Schools |
滝口正哉 TAKIGUCHI Masaya |
論 文 | 学び舎歴史教科書で学ぶ市民学習会 History Textbook of Manabisha and the Citizens’ Workshop for the Learning of History |
鳥塚義和 TORIZUKA Yoshikazu |
論 文 | 労働者教育のなかの近現代史学習―主権者として不可欠な素養を身につけるために Learning of Modern-Contemporary History in the Education of Workers |
吉田ふみお YOSHIDA Fumio |
論 文 | 【インタビュー】「新書」の中の歴史学 Studying History by Paperback Academic Books ('Shinsho') |
松田健 《聞き手》宮瀧交二 MATSUDA Ken MIYATAKI Koji |
第56回大会準備号 | 歴史認識のポリティクス―地域・国家・市場―
大会テーマの設定にあたって |
全国委員会
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第56回大会準備号 | 歴史認識のポリティクス―地域・国家・市場― 《第1日目》ポスト冷戦期の歴史認識 「歴史」の書かれ方と「記憶」のされ方 ―人々はなぜ過去をめぐって諍いを起すのか |
橋本伸也
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第56回大会準備号 | 歴史認識のポリティクス―地域・国家・市場― 《第1日目》ポスト冷戦期の歴史認識 ポスト・トゥルース時代の歴史認識 ―米国「歴史戦争」から一六一九年プロジェクト論争へ |
中野耕太郎
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第56回大会準備号 | 歴史認識のポリティクス―地域・国家・市場― 《第2日目》地域アイデンティティと歴史認識 「記念」するという行為と記念碑文化の特徴 |
羽賀祥二
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第56回大会準備号 | 歴史認識のポリティクス―地域・国家・市場― 《第2日目》地域アイデンティティと歴史認識 アメリカ南部における戦争の記憶と記念碑 ―アメリカ独立戦争を中心に |
和田光弘
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第56回大会準備号 | 歴史認識のポリティクス―地域・国家・市場― 《第2日目》地域アイデンティティと歴史認識 一八九〇年代における「地方史学会」の組織と活動 |
廣木尚
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書 評 | 村井章介・荒野泰典編『新体系日本史 五』 |
廣瀬憲雄 |
書 評 | 佐藤雄一著『古代信濃の氏族と信仰』 |
鈴木正信 |
書 評 | 浜田久美子著『日本古代の外交と礼制』 |
森公章 |
書 評 | 榎原雅治著『地図で考える中世』 |
高橋修 |
書 評 | 中野智世・木畑和子・梅原秀元・紀愛子著『「価値を否定された人々」』 |
横山尊 |
書 評 | 笹川裕史編著『現地資料が語る基層社会像』 |
田中比呂志 |
紹 介 | 鈴木一郎・宮瀧交二監修『武蔵国・新羅郡の時代』 |
森田喜久夫 |
* | 加盟組織の活動報告 |
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* | 加盟組織の機関紙案内 |
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* | 〈会告〉会費口座振替に関するお知らせ |