『歴史評論』2022年7月号(第867)/ Historical Journal(REKISHI HYŌRON) July 2022 vol.867

特集/ジェンダー史・クィア史の現在地 “Current State of Source Criticism and Studies in Gender and Queer History”

定価 957円  


 J.W.スコットの『ジェンダーと歴史学』が翻訳刊行されて三〇年経ちました。私たちの史資料の見つけ方・読み解き方はいかに変わったのでしょうか。ジェンダー史やクィア史は、私たちが無意識に前提としているジェンダー観や異性愛主義自体を問い直すことで、当該社会の差別とその再生産のありようを明らかにしてきました。それは私たちが拠って立つ社会構造そのものを捉え直すことにもつながりました。これまでの蓄積を前に、史資料と研究を読む・編む私たちの現況も振り返ってみたい。そのような思いで、本号ではおのおののフィールドで史資料と向き合ってこられた方がたにご寄稿いただきました。「不在」ないし周縁化されてきた主体や言説、問いをこれまでの歴史研究に見出す各論考からは、従来の問題意識やことばの枠組みによって史資料が「ない」とされてきた、あるいは気づかず通り過ぎてきた可能性があぶり出されます。
 ジェンダー史・クィア史は男/女という可変的なカテゴリーのみならず、性差が「ない」かのように形成されてきた公的領域や、性愛のありかたを、史資料、さらには私たちの歴史認識に問うてきました。だれを歴史叙述から排除し、閑却し、招き入れてきたのか、歴史の捉え方も常に更新を迫られるのです。
 私たちはそれぞれの思いを抱いて史資料に向き合います。そんな問いの入り口に、あるいはさまよう中で、本号が現在地を知る地図のひとつとなれば幸いです。(編集委員会)

  *  特集にあたって 編集委員会
論  文 西洋ジェンダー史研究の可能性
The Possibilities of Western Gender History
弓削尚子
YUGE Naoko
論  文 史料の中に「男性」を読み取る ―男性史研究における史料へのアプローチー
Uncovering Masculinities in Historical Source Materials
兼子歩
KANEKO Ayumu
論  文 視覚文化研究における私のジェンダー史的アプローチ
Visual Culture Studies and my Perspective of Gender History
吉良智子
KIRA Tomoko
論  文 イスラーム法のなかの「子ども」とジェンダー史
Children in Islamic Law and Gender History
小野仁美
ONO Hitomi
論  文 男性同性愛の歴史と雑誌メディア
History of Male Homosexuality and Magazine Media
前川直哉
MAEKAWA Naoya
論  文 党派政治とジェンダー ―一八五六年大統領選における政治的レトリックとしての「フリー・ラヴ」― 
Partisan Politics and Gender  
箕輪理美
MINOWA Satomi
論  文 「嫁ぐ」のは誰? ―言葉のジェンダー変容―
Who's going to "Totugu"
服藤早苗
FUKUTO Sanae
論  文 木戸孝允と朝鮮外交 ―宗義達への通達案を中心に―
Kido Takayoshi and diplomacy with Korea
村田明夫
MURATA Akio
書  評 古畑徹著『渤海国と東アジア』
浜田久美子
書  評 林大樹著『天皇近臣と近世の朝廷』
佐藤一希
紹  介 ジョルダン・サンド著・池田真歩訳『東京ヴァナキュラー』
源川真希
  * 2.11集会 ―各地の記録(北海道/宮城/東京/愛知/三重/大阪/奈良)
白木沢旭児
柳原敏昭
小糸美咲
堀田慎一郎
新田康二
北泊謙太郎
杉田義

 

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