本号は、昨年２０２１年１２月４・５日に、長期化するCOVID-１９によるパンデミックの中で、前年度に引き続きオンライン方式で開催された、歴史科学協議会・第５５回大会の成果をまとめた特集号です。大会は、第５３回大会で設定した統一テーマを継承し、「変貌する国家と個人・地域Ⅲ」と題し、二つのテーマを設定して開催されました。
1日目は、統一テーマを承けて「パンデミック下の生存と新自由主義の克服」というテーマの下、２本の報告が行われました。新自由主義の下で社会保険をはじめとする公的支出が抑制された問題を歴史的に考えるために、永島剛氏には１９世紀半ばから１９４８年の国民保険サービスの始動に至る約一世紀にわたるイギリスの公衆衛政策を論じていただきました。また、蓑輪明子氏には、“コロナ禍”でより一層顕在化した女性労働とケアに関する諸問題を、日本現代史の立場から構造的・歴史的に検討していただきました。２日目には、「性売買・性暴力と国家・地域・個人」をテーマに３本の報告がありました。吉元加奈美氏は大坂・堀江新地を対象として、天保改革に伴う遊所統制政策転換ととその影響を論じ、人見佐知子氏は公娼制度下における娼妓・妓楼・周旋業者等の実態を解明しました。そして最後に林博史氏は、近代帝国主義国が植民地や占領地等で展開した軍隊向けの性的施設について検討して下さいました。今大会の諸成果が、今後も批判・継承されていくことを願ってやみません。（編集委員会）
| ＊ | 特集にあたって | 編集委員会 |
| 論 文 | 《第１日目テーマ パンデミック下の生存と新自由主義の克服 Living in Times of Pandemic: Overcoming Neoliberalism》 近代イギリス保健医療と政府の役割 Public Health and the Role of Government in Modern Britain |
永島剛 NAGASHIMA Takeshi |
| ＊ | 大会１日目 討論要旨 | 冬木里佳
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| 論 文 | 《第２日目テーマ 性売買・性暴力と国家・地域・個人 Sex Trade and Gender-Based Violence in History: Their Relations with the State, Regions and Individuals》 天保改革下の遊所統制と堀江新地 Changes in the Regulation of Unlicensed Prostitutes in the Tempo Reforms and Their Effects on Horie-shinchi |
吉元加奈美 YOSHIMOTO Kanami |
| 論 文 | 《第２日目テーマ 性売買・性暴力と国家・地域・個人 Sex Trade and Gender-Based Violence in History: Their Relations with the State, Regions and Individuals》 娼妓と近代公娼制度― 一次史料からみる娼妓の住み替えと廃業― The Shogi and Licensed Prostitution in Modern Japan |
人見佐知子 HITOMI Sachiko |
| 論 文 | 《第２日目テーマ 性売買・性暴力と国家・地域・個人 Sex Trade and Gender-Based Violence in History: Their Relations with the State, Regions and Individuals》 近代帝国主義諸国の軍用性的施設 Military Brothels under the Imperialism |
林博史 HAYASHI Hirofumi |
| ＊ | 《第２日目テーマ 性売買・性暴力と国家・地域・個人 Sex Trade and Gender-Based Violence in History: Their Relations with the State, Regions and Individuals》 三報告に対するコメント | 吉見義明 |
| ＊ | 大会２日目 討論要旨 | 関千賀子
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| ＊ | 《第５５回大会報告を聞いて》
永島剛報告へのコメント |
高林陽展
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| ＊ | 《第５５回大会報告を聞いて》
２０２１年度大会報告２日目「性売買・性暴力と国家・地域・個人」を聞いて |
小野沢あかね
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| ＊ | 第５５回大会参加記 | 井澤美雪／ 桐山節子／ 塩川隆文 |
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| 歴史の眼 | 【リレー連載：二一世紀の災害と歴史資料・文化遺産⑨】
球磨川水害と文化財 |
萬納恵介 |
| 書 評 | 大平聡著『日本古代の王権と国家』 | 中村友一 |
| 書 評 | 眞田尊光著『鑑真と唐招提寺の研究』 | 冨樫進 | 書 評 | 金子龍司著『昭和戦時期の娯楽と検閲』 | 上田誠二 |
| 紹 介 | 岩本裕子・西崎緑編著『自由と解放を求める人々』 | 武井寛 |
| 紹 介 | ラン・ツヴァイゲンバーグ著／若尾祐司・西井麻里奈・竹本真希子訳『ヒロシマ』 | 川口悠子 |
| 紹 介 | 土肥義和編『八世紀～十一世紀初期 敦煌氏族人名集成 牽引編』 | 河野保博 |
| 紹 介 | 宇野田尚哉・坪井秀人編著『対抗文化史』 | 高田雅士 |