『歴史評論』2022年5月号(第865) Historical Journal(REKISHI HYŌRON) May 2022 vol.865

特集/記憶を継承する「博物館」 “Museums that Keep“Historical Memories” ”

定価 957円  


 歴史資料館や美術館、文学館といった広義の「博物館」は、展示施設や研究機関である以前に、まずは、いずれも資史料や作品の保存機関として誕生し、運営されています。したがって、歴史研究者は、自身の研究の拠り所となる資史料の収集、保管(保存・管理)、調査研究、展示にかかる諸問題について、また、こうした資史料の保存機関である「博物館」それ自体の維持・管理について、日頃から大いに関心を寄せる必要があり、本誌でも定期的に特集を重ねてきたところです。そして、このような「博物館」の中には、「博物館」それ自体が、様々な歴史の記憶を次世代に継承していくことを、その社会的な使命としているところも少なくありません。
 今回の特集では、国内外で重要な役割を果たしている、このような「博物館」に焦点を当ててみました。それぞれの論考は、「博物館」が継承している歴史の記憶の紹介はもとより、例えば平和資料館が抱えている戦争体験者の減少や、異常気象・災害の多発に伴う収蔵・展示資料の保管環境の悪化といった緊急課題、さらには、経営組織の再編や展示室のリニューアルといった、現在、数多くの「博物館」が直面している共通の課題などについても、具体的な事例の中から洗い出して検討しています。本特集を通して、歴史の記憶を継承していくなかで、将来に向けて、今、私たちは何をしたらよいのか、その方向性を見極めていきたいと思います。(編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
 論  文 東京大空襲を伝える博物館の試み
Attempts of a Museum to Convey the Experiences of the Great Tokyo Air Raid
石橋星志
ISHIBASHI Seishi
 論  文 広島平和記念資料館の現在地 ―常設展示リニューアルと資料入替を中心に―
The Hiroshima Peace Memorial Museum Today: Focusing on the Renovation of Permanent Exhibition and Subsequent Changes of Exhibits
小山亮
KOYAMA Ryo
 論  文 震災資料と震災展示 ―阪神・淡路大震災記念人と防災未来センターをめぐって―
Exhibits of Records of Earthquake Disasters
吉川圭太
YOSHIKAWA Keita
 論  文 侵華日軍第七三一部隊罪証陳列館 ―その設立経緯と展示の概要について―
The Exhibition Hall of Evidences of Crime Committed by Unit 731 of the Japanese Imperial Army:The Process Leading to its Foundation and its Exhibit Overview
田中寛
TANAKA Hiroshi
 論  文 植民地歴史博物館が問いかけるもの
What Museums Ask: The Case of The Museum of Japanese Colonial History in Korea
野木香里
NOGI Kaori
歴史のひろば 「時務の歴史」に向き合い続けて ―姜徳相先生を悼む―
河かおる
 歴史の眼 【リレー連載:二一世紀の災害と歴史資料・文化遺産G】
東日本大震災から一〇年目の資料保全 ―二〇一九年台風一九号とコロナ禍、「二つの災害」のなかで―
川内淳史
 書  評 矢越葉子著『日本古代の文書行政』
山本幸男
 書  評 木村拓著『朝鮮王朝の侯国的立場と外交』
程永超
 書  評 浜井和史著『戦没者遺骨収集と戦後日本』 
一ノ瀬俊也
 紹  介 川合康著『源頼朝』
工藤祐一
 紹  介 「陵墓限定公開」四〇周年記念シンポジウム実行委員会編『文化財としての「陵墓」と世界遺産』
森田喜久男
   *  声明 ロシア軍のウクライナへの侵攻を非難する

   *  会告 投稿規定改定のお知らせ

 

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