『歴史評論』2022年3月号(第863) Historical Journal(REKISHI HYŌRON) March 2022 vol.863

変革期の社会と宗教―前近代の日本から “Society and Religion in the Age of Change: in Premodern Japan”

定価 957円  


 前近代の日本社会をとらえるにあたって、時代の変わり目における宗教の動向は大きな歴史的関心を集めてきました。かつての研究では古代末期の末法思想と浄土教の広まり、中世後期における日蓮宗の展開や一向一揆の活動などに注目が集まりがちでしたが、近年の研究ではいわゆる「鎌倉新仏教」のような主要仏教宗派のみならず、さまざまな宗教に注目した研究が進み、前近代社会における多様な宗教像が明らかにされつつあります。また海外とのつながり、地域社会との関係、次の時代への萌芽的要素の解明など、これまでとは異なる視点から宗教の変革を見出し、既存のイメージを塗り替える新たな前近代宗教像が提示されています。
 そこで本特集では、前近代日本社会における多様な宗教が変革期に際してどのような変化や展開を遂げたのかを明らかにするとともに、新たな視点からその変革のあり方を探っていきたいと思います。二〇二一年八月に開催された日本宗教史懇話会サマーセミナーでの同名シンポジウムをもとに、寺院組織、陰陽道、修験、神道など前近代日本社会のさまざまな宗教を取り上げて論じていただくとともに、近年の宗教史研究上の論点とのかかわりをコメントしていただきました。最新の研究動向や新たな問題関心、視点を踏まえ提示された本特集での成果が、前近代日本社会の多様な宗教のあり方や宗教の変革をとらえるさまざまな議論を提起し、深めていくきっかけとなればさいわいです。(編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
 論  文 総論「変革期の社会と宗教」
Introduction to the Special Issue: Society and Religion in the Age of Change
苅米一志
KARIKOME Hitoshi
 論  文 奈良・平安・鎌倉時代の定額寺
Jokakuji in the Nara, Heian, and Kamakura Periods
岡野浩二
OKANO Kouji
 論  文 陰陽道・宿曜道別立隆盛の淵源 ―〈術数文化〉の視点から―
The Origin of the Independent Prominence of Onmyōdō and Sukuyōdō From the Perspective of Shu-shu Culture
水口幹記
MIZUGUCHI Motoki
 論  文 修験道から見た戦国仏教
Sengoku Buddhism from the Perspective of Shugendo
近藤祐介
KONDO Yusuke
 論  文 中近世移行期における吉田神道の意義
The Significance of Yoshida Shinto in the Transition from the Medieval to the Early Modern Period 
伊藤聡
ITO Satoshi
私の歴史研究 抵抗の歴史学から政治文化論へ
深谷克己
《聞き手》大橋幸泰

科学運動通信 二〇二一年度陵墓懇談会(東京・宮内庁書陵部)参加記
森田喜久男
 書  評 永村眞著『中世醍醐寺の仏法と院家』
相馬和将
 紹  介 鄭鍾賢著/渡辺直紀訳『帝国大学の朝鮮人―大韓民国エリートの起源』
通堂あゆみ
 紹  介 浅倉むつ子・戎能民江・田村智子著、政治革新めざすオール早稲田の会編集『ジェンダー平等の実現めざして』
大野聖良
 紹  介 ゼバスティアン・コンラート著/小田原琳訳『グローバル・ヒストリー』
浅田進史
  * 二〇二二年度 歴史科学協議会総会報告

 

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