『歴史評論』2021年8月号(第856) Historical Journal(REKISHI HYORON) August 2021 vol.856

特集/戦場の宗教―近代の戦争と宗教動員 “Religion on the Battlefield -Modern War and Mobilization of Religion-”   

定価 957円  


 宗教と戦争とは古くから深い関係にあり、日本でも宗教をきっかけにした「宗教戦争」が歴史上たびたび起こっています。他方、近代における戦時大量動員のもとで、宗教は人々を戦争へと駆り立てるうえで重要な役割を担い、また宗教も戦争のために動員されることとなりました。そうした過去の姿勢に対して、日本の諸宗教は「平和」をスローガンに掲げ、戦時期の協力を「反省」する姿勢を示してきました。
 その一方、近代における「宗教と戦争」の関係を直接的かつ実証的に論じようとする研究は、かつては必ずしも戦争史や宗教史において大きな関心を集めてきたとは言えません。「近代日本の宗教と戦争」という研究課題が大きく進展したのは、二〇〇〇年代以降のことでした。本特集は、近年盛んになってきた「宗教と戦争」研究の到達点と今後の課題を、主に宗教史・宗教学の成果を踏まえて論じようというものです。
 宗教と戦争との関係といっても多岐にわたり、関係を取り結ぶ空間も銃後、植民地や占領地、戦場と多様ですが、本特集ではなかでも「戦場の宗教」という視点をとり、戦場や占領地で宗教がどのように戦争と関わったのか、宗教はどのように人々を戦争へと動員しようとしたのか、またその背景にあった各教団の動向、といった側面に着目しています。本特集が、近代の宗教と戦争との関係について、深く考えるきっかけになればと思います。(編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
 論  文 「戦場の宗教」を問う
A Study of ‘Religion on the Battlefield’
大谷栄一
ŌTANI Eiichi
 論  文 日清戦争と日蓮宗 ―報国義会の活動と従軍布教―
Nichiren Shu Order During the First Sino-Japanese War
安中尚史
ANNAKA Naofumi
 論  文 日本軍占領地における「宗教的自由空間」 ―華北中華基督教団を事例に―
“Religious Space of Freedom” in the Midst of Japanese Occupation in Wartime China: A Case Study of the North China Christian Union. 
松谷曄介
MATSUTANI Yosuke
 論  文 連合組織からみる総力戦期の仏教界 
Buddhist Circles during the Period of Total War: Coalition of Organizations
小林惇道
KOBAYASHI Atsumichi
歴史のひろば 戦後日本のキリスト教と「戦争」
Christianity and War in Postwar Japan 
石川明人
ISHIKAWA Akito
歴史のひろば 【リレー連載:人類は感染症といかに向き合ってきたか?C】
近代医学と社会の分断 ―「アフリカ」が問うもの―
磯部裕幸
歴史のひろば 天皇陵にみる重層性 ―「人類共通の遺産」と「攘夷」―
外池昇
 歴史の眼 【リレー連載:二一世紀の災害と歴史資料・文化遺産A】
台風一九号被害の文化財レスキューと信州資料ネット

原田和彦
 歴史の眼 大阪人権博物館をめぐる近年の動向
朝治武
 書  評 西本昌弘著『空海と弘仁皇帝の時代』 松本郁代
 書  評 大庭裕介著『司法省と近代国家の形成』 山口亮介
 書  評 崔誠姫著『近代朝鮮の中等教育』 佐藤由美
 紹  介 山田敬男・関原正裕・山田朗著『知っておきたい日本と韓国の一五〇年』 崔誠姫
 

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