『歴史評論』2021年7月号(第855) Historical Journal(REKISHI HYORON) July 2021 vol.855

特集/女性史・ジェンダー史から問う自治体史 “Reconsidering Municipal History from the Perspective of Women's History and Gender History”

定価 957円  


 この地域の歴史を知りたい。そう思ったとき、まず手に取るひとつが自治体史ではないでしょうか。レファレンス依頼を受けた図書館や行政でも自治体の「公的」な地域史として活用しています。日本史では、アーカイブズ、文化財、市民協働など多方面から自治体史の検討と実践が続けられています。
 では、自治体史はいかなる立場から書かれているでしょうか。いかなる人がその地域の歴史の構成員として書かれているでしょうか。異議を投げかけたのが女性史研究者をはじめとした人びとでした。女性の歴史をいかに解明し書き直すか――本号では、編さんを担われた方がたにその実践や葛藤、成果と課題をご寄稿いただきました。他方、日本でいう自治体史編さん、そして地域史研究がいかに実践されているか、台湾、イギリスをフィールドとされる方に論考をお寄せいただきました。女性史やジェンダー史の観点から地域史を捉え直そうというのが本号の企図です。
 ジェンダー視点をふまえた歴史叙述をという認識は広まって久しいですが、日本の場合、ジェンダー視点をもった自治体史編さんは男女共同参画事業の一環としての「自治体女性史」に代表される傾向があります。しかし、これは到達点ではなく、実践し更新し続けるための出発点です。地域史、歴史の紐解き方はいかに変わったのか、変わっていないのか。自治体史を糸口に、「地域」の括り方、捉え方を含め、改めて地域史の読み方、書き方、活かし方を考えてみませんか。(編集委員会)

 *  特集にあたって 編集委員会
論  文 自治体史編さんという経験―地域史・女性史・ジェンダー史―
Experience of Compiling the History Book of a Local Community
藪田貫
YABUTA Yutaka
論  文 最近の自治体史編さんと女性史
Modern Women's History in the History of Japanese Prefectures
石月静恵
ISHIZUKI Shizue
論  文 青森県の女性史資料と自治体史―『青森県女性史―あゆみと暮らし』を中心に― 
A Compilation of Aomori Women’s Historical Documents from the Perspective of a Prefectural History: Focusing on Aomoriken joseishi ―― Ayumi to kurashi
北原かな子
KITAHARA Kanako
論  文 沖縄・女性史編さんのあゆみ―那覇市、沖縄県の事業をとおして― 
The Path of Compiling Women’s History in Okinawa
宮城晴美
MIYAGI Harumi
論  文 バーミンガム市史とジェンダー
History of Birmingham and Gender  
岩間俊彦
IWAMA Toshihiko
論  文 現代台湾の地方志編纂とジェンダー 
Local Gazetteers in Contemporary Taiwan: From a gender perspective
都留俊太郎
TSURU Shuntaro
歴史のひろば 【リレー連載:人類は感染症といかに向き合ってきたか?B】
婦長殉職之碑とその周辺 ―戦時ハンセン病療養所における職員「顕彰」―
松岡弘之
歴史の眼 【リレー連載:二一世紀の災害と歴史資料・文化遺産@】
連載にあたって
編集委員会
歴史の眼 【リレー連載:二一世紀の災害と歴史資料・文化遺産@】
地域歴史文化の継承と「資料ネット」活動
天野真志
書  評 宮川麻紀著『日本古代の交易と社会』 中村修也
書  評 山本聡美著『中世仏教絵画の図像誌』   宇野瑞木
書  評 森暢平著『近代皇室の社会史』  早川紀代
書  評 趙景達著『近代朝鮮の政治文化と民衆運動』  糟谷憲一
紹  介 吉田伸之・森下徹編著『全体史へ≪山口啓二の仕事≫』    町田哲
  * 二・一一集会――各地の記録 白木沢旭児
七海雅人
堀川徹
堀田慎一郎
中井悠貴
島田克彦
 

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