『歴史評論』2021年5月号(第853) Historical Journal(REKISHI HYORON) May 2021 vol.853

特集/ひとびとの歴史意識に向き合い、疑問に答える “Controversies over History and Popular Historical Consciousness in Contemporary Japan”

定価 957円  


 歴史をひもとくことには、過去のひとびとが生きた時代を理解し、それにより現在の自分たちが進む道をさぐる役割があります。歴史に対する社会の関心は高く、昔から講談、小説などを含めてさまざまな形で親しまれてきました。それらは必ずしも歴史学研究をふまえた叙述ではありませんでしたが、ひとびとの歴史意識の形成に寄与してきました。
 しかし、意図的に歪曲された歴史像、学術的成果を無視して拡散されている情報も少なくありません。特にインターネットの普及で、近現代史をめぐるいくつかの論点については、その傾向が強くあらわれています。こうした状況は歴史学研究の担い手にとって放置できないのであり、書籍やマスメディアをつうじて研究成果にもとづいた歴史像を提供し、また、ひとびとの歴史に対する関心や疑問にこたえなければなりません。
 本特集では、日本、西洋の近現代史についていくつかのトピックをとりあげ、最新の研究成果にもとづきながら歴史像を提示します。それによって、意図的に歪曲され、インターネットなどでひろく流布されている歴史をめぐる言説に対抗します。とりわけ戦争責任や植民地支配などの論点、さらには、それに関連する歴史意識の現状をさまざまな視角から扱います。本特集が、歴史に関心をもつ広範なひとびとの疑問に答える材料として活用されることを願ってやみません。(編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
論  文 「歴史認識」の現在と歴史学研究者
How Historians Deal with Memories of Japan’s Imperial War and Colonial Rule
源川真希
MINAGAWA Masaki
論  文 司馬文学の受容から何を受けとめるのか 
On Ryotaro Shiba: An Inquiry by a Historian
原田敬一
HARADA Keiichi
論  文 「南京事件」論争の到達点とそれから ―「不条理な死」とその規模を考える― 
The Current Status of the Controversy related to 'Nanjing Incident'
伊香俊哉
IKO Toshiya
論  文 韓国における植民地期歴史像の葛藤 ―「反日種族主義」事態をめぐって― 
Conflicting Historical Perceptions of the Colonial Past in South Korea
三ツ井崇
MITSUI Takashi
論  文 ホロコースト否定論の短い「歴史」 ―歴史の否定の法規制に至るまで―
A Short History of Holocaust Denial 
武井彩佳
TAKEI Ayaka
論  文 「ウォー・ギルト」とは何か ―江藤淳「ウォー・ギルト」論に対する批判的考察― 
What Does "War Guilt" Mean? 
賀茂道子
KAMO Michiko
論  文 敗戦直後日本における朝鮮人への差別的偏見
Discriminatory Prejudice against Koreans in Early Postwar Japan
金耿昊
KIM Kyeongho
論  文 寛政天保期における鉄商品の廻送と小型廻船 ―石見国銀山附幕領の事例から― 
Shipping of Iron Commodities by Small Cargo Vessels during the Kansei-Tempo Period(1789-1845)
中安恵一
NAKAYASU Keiichi
書  評 熊本史雄著『近代日本の外交史料を読む』 佐々木雄一
書  評 桐山節子著『沖縄の基地と軍用地料問題』 上原こずえ
書  評 石田雅春著『戦後日本の教科書問題』  大串潤児
書  評 加藤諭著『大学アーカイブズの成立と展開』 清水善仁
紹  介 中野目徹編著『官僚制の思想史』  真辺将之
紹  介 今井清一著『関東大震災と中国人虐殺事件』  大西比呂志
紹  介 岡本有佳・加藤圭木編著/Fight for Justice編集協力『だれが日韓「対立」をつくったのか』  吉澤文寿
追  想 渡辺新さんを悼む  大豆生田稔
 

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