『歴史評論』2021年3月号(第851) Historical Journal(REKISHI HYORON) March 2021 vol.851

特集/日本近現代から都市史研究を考える “Rethinking Urban History of Modern Japan”

定価 957円  


 歴史学研究の対象が時代の変化にともなって変わることは、しばしばみられる現象です。かつて日本の近現代史は、農村を研究の中心に置いてきました。これはわたくしたちの生きてきた「近代」の理解にかかわる認識でした。そうしたなかで都市が新しい視角のもとで研究対象となったことは、一つの変化でした。本誌においては、一九九一年の特集(「歴史学のいま」)において都市史の研究状況が整理され、さらに一九九六年度には歴科協大会のテーマにもなりました。この時期に歴史学のパラダイムが変容をみせたことと関係するかも知れません。また同時期にみられた政治体制の変化のなか、韓国においても植民地時代をはじめとした都市の研究に変化のきざしがみえていきます。それから四半世紀を経て、近現代の都市史はどのような展開をみせたのでしょうか。
 この間、新自由主義が都市も含む社会を覆いました。それは住民の生活や意識に変化をもたらし、人と人だけではなく、都市のあいだの熾烈な競争をあおりました。こうして「ランキング」によりものの価値をはかる風潮が、わたくしたちの意識を支配しました。さらに、新自由主義が都市部の保健衛生にかかわるインフラに打撃を与えるなかで、感染症が襲いかかってきたのです。本特集は、進展する植民地史研究もふまえ、日本の近現代を中心に都市史研究の論点をふりかえります。これによって歴史学全般のあり方を考え、ひいては現在の支配的な価値観を相対化するきっかけにしたいと思います。(編集委員会)

 
   *  特集にあたって 編集委員会
 論  文 戦後歴史学・現代歴史学と都市史研究 ―コロナ禍の世界のなかで考える―
Postwar History / Contemporary History and Urban History of Modern Japan -Thinking in the World of COVID-19
中嶋久人
NAKAJIMA Hisato
 論  文 韓国における植民地都市史研究の現況と展望
Current Status and Perspective of Colonial Urban History study in Korea
廉馥圭
YUM Bokkyu
 論  文 成立期の近代都市と代議制 
Representative Government in the Formative Years of the Modern City
池田真歩
IKEDA Maho
 論  文 近代都市下層社会研究の成果と課題
Achievements and Issues of Research on the Lower Society of Modern Cities
町田祐一
MACHIDA Yuuichi
 論  文 都市インフラと政治
The Political History of Urban Infrastructures in Japanese Modern Cities
松本洋幸
MATSUMOTO Hiroyuki
 論  文 都市政治史の新展開
New Development of Urban Political History of Modern Japan 
中村元
NAKAMURA Moto
歴史のひろば 【リレー連載:人類は感染症といかに向き合ってきたか?①】
『流行性感冒―「スペイン風邪」大流行の記録』を読む
森田喜久男
 歴史の眼 光州をめぐる孤独と連帯 ―「社会的哀悼」へ向けて― 真鍋祐子
 書  評 窪田涼子著『中世在地社会の共有財と寺社』 田村憲美
 書  評 繁田真爾著『「悪」と統治の日本近代』 辻岡健志
 紹  介 葛継勇・河野保博著『入唐僧の求法巡礼と唐代交通』 村松弘一
 紹  介 原田敬一著『日清戦争論』 渡邊桂子
   *  二〇二一年度 歴史科学協議会総会報告   *
   *  総会決議   *
 

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