『歴史評論』2021年2月号(第850) Historical Journal(REKISHI HYORON) February 2021 vol.850

特集/女房イメージをひろげる “Reimagining the Nyōbō (female attendant)”

定価 957円  


 女房といえばだれもが摂関期の紫式部や清少納言を思い浮かべると思います。しかし、彼女たちが何のために、どのような仕事をしているのか、具体的に答えられる人はさほど多くないでしょう。女房が内裏だけではなく院や女院、武家や在地領主など様々な家に仕えていたこと、女房が明治初年まで存在したことなども、あまり知られていないように思われます。
 近年、ジェンダー分析の定着もあって、女房の研究が急速に進展しています。それらの研究では摂関期以外の時期を扱うことによって、男性と並ぶ近臣としての女房の本質や、機能の変化、女房仕えをめぐる意識の変化などが明らかになりつつあります。また女房を主体性を持った一人の個人としてとらえることで、彼女たちのライフコースや人的ネットワーク、収入や実家との関係、信仰と宗教活動などが論じられています。女房を多角的に、かつ通時的にとらえる基盤が整いつつあるのです。
 本特集では、女房の成立と終焉、さらにその後をうける近現代女官制度の展開に至るまで、広いスパンで最新の研究成果を紹介します。それらを通覧すれば、女房論が文学史や女性史にとどまらず、政治史や社会経済史など多様な分野とかかわるテーマであること、また女房文学も女房の存在形態と密接にかかわって生み出されたことが明らかになるはずです。本特集を通して、歴史を生きた女房たちをより豊かにイメージしていただけることを願っています。(編集委員会)

    
 *  特集にあたって 編集委員会
論  文 女房制度の成立過程
The Development of the Nyōbō System
岡島陽子
OKAJIMA Yoko
論  文 女院女房の荘園知行
Female Attendants Who Oversaw the Estates of a Nyoin (Premier Royal Lady) 
野口華世
NOGUCHI Hanayo
論  文 鎌倉時代の女房の後半生 
The Latter Life of the Nyōbō in the Kamakura Period
土谷恵
TSUCHIYA Megumi
論  文 宮廷女房文学としての『とはずがたり』
Towazugatari as Court Women's Literature
田渕句美子
TABUCHI Kumiko
論  文 戦国期の室町幕府女房衆
Nyōbōshū(Female Attendants)of the Muromachi Shogunate in the Sengoku Period
木下昌規
KINOSHITA Masaki
論  文 近代女官とその機能の変化
The Court Ladies in Modern Japan 
小田部雄次
OTABE Yuji
歴史の眼 首里城火災と被災文化財 ―課題と提言― 安里進
文化の窓 【リレー連載 川から見る風景⑧】多摩川の水運がつないだ村々 角和裕子
書  評 酒匂由紀子著『室町・戦国期の土倉と酒屋』 河内将芳
書  評 松田英里著『近代日本の戦傷病者と戦争体験』 岸博実
書  評 小都晶子著『「満洲国」の日本人移民政策』 玉真之介
書  評 舟橋正真著『「皇室外交」と象徴天皇制一九六〇~一九七五年』 吉次公介
紹  介 服藤早苗・高松百香編著『藤原道長を創った女たち』 野口孝子
紹  介 菅原征子著『近世の女性と仏教』 小西洋子
紹  介 伊藤康子著『市川房枝』 伊藤めぐみ
 

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