『歴史評論』2020年9月号(第845) Historical Journal(REKISHI HYORON) September 2020 vol.845

特集/中世村落史研究のフロンティア “Frontiers of Historical Research on Medieval Villages”

定価 957円  


 近年、日本中世の村落史関係の単行本の出版が相次いでいます。個人によるこれまでの研究の集大成もあれば、共同研究の成果を世に問うものもあり、その形態は様々ですが、共通しているのは、従来にない新しい視点や方法によって、この古典的なテーマに挑んでいる点でしょう。
 日本の中世村落をめぐる研究は、これまでも、それぞれ時代との緊張関係の中で、その課題を育んできましたが、近年の村落史研究の盛り上がりは、やはり気候変動を要因とする大規模な災害の連続や、環境・環境問題に対する社会的な関心の高まりなどがその背景にあると思われます。古環境の復元研究などにおける自然科学的なデータやその再現技術の精度が高まってきたことや、度重なる災害を乗り越えてきた過去の社会の強さやしなやかさの要因がどこにあるのかといった問いが、歴史学に対して向けられているのも要因と言えるでしょう。また、頻発する現実の災害で文化財の被災が増加するにつれ、歴史学の基盤である文献史料を伝えてきた地域社会や、そこに集積された文書の独自性にも注目が集まっています。これらの動きは、伝統的な古文書学の枠組みを相対化する新たな史料論の地平を切り拓きつつあると言えるでしょう。
本特集は、近年出版された中世村落史の著作をいくつかを取り上げながら、それらを研究史に位置づけ、今後の中世村落史研究の行方を展望したものです。本特集が、中世村落史研究の活性化により見えてくる問題を考える契機となれば幸いです。(編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
 論   文 「村」・「ムラ」はあれど「むら」はなし ―中世前期村落の評価のために―
For an Evaluation of Features of Village in Early Middle Japan
木村茂光
KIMURA Shigemitsu
 論   文 中世地下文書・村落文書論の現在 ―春田直紀編『中世地下文書の世界』・薗部寿樹『日本中世村落文書の研究』を中心に―
Current State of Studies on Medieval Commoner and Village Documents
西川広平
NISHIKAWA Kohei
 論   文 災害史研究と村落のレジリエンス ―海老澤衷編『中世荘園村落の環境歴史学』を読む―
Historical Researches on Natural Disasters and Resilience of Local Communities
伊藤俊一
ITO Toshikazu
 論   文 環境史・生業論から中世村落史研究を再構築するために
Restructuring Historical Studies on Japanese Medieval Villages from the Perspectives of Livelihood Theory and Environmental History
高木徳郎
TAKAGI Tokurou
 論   文 あらためて村落とは何か ―大山喬平・三枝暁子編『古代・中世の地域社会』を中心に―
Reimagining the Medieval Villages
似鳥雄一
NITADORI Yuichi
 書   評 植田真平著『鎌倉府の支配と権力』
山田邦明
 書   評 銭静怡著『戦国期の村落と領主権力』
湯浅治久
 書   評 原口大輔著『貴族院議長・徳川家達と明治立憲制』
後藤致人
 書   評 中野良著『日本陸軍の軍事演習と地域社会』
荒川章二
 書   評 石井香江著『電話交換手はなぜ「女の仕事」になったのか』
中村江里
 書   評 黒川みどり・山田智著『評伝 竹内好』
丸川哲史
 書   評 本岡拓哉著『「不法」なる空間にいきる』 
鄭栄桓
 紹   介 山岸裕美子著『中世武家服飾変遷史』
伊藤瑠美
 紹   介 小薗崇明・渡辺哲郎・和田悠編著『子どもとつくる平和の教室』
岩立将史
 紹   介 総合女性史学会・辻浩和・長島淳子・石月静恵編著『女性労働の日本史』
坂井博美
 紹   介 宮地正人著『天皇制と歴史学』
佐藤大悟
 紹   介 箕作麟祥纂輯/世界史研究所翻刻・編集『萬國新史』  
割田聖史
 紹   介 佐藤信編著『新版 図説歴史散歩事典』 
森田喜久男
※特集タイトル、執筆者、論文タイトルはすべて仮のものです。  

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