『歴史評論』2020年7月号(第843) Historical Journal(REKISHI HYORON) July 2020 vol.843

特集/男性性/マスキュリニティの歴史学 “Masculinities in Modern History”

定価 957円  


 近年、ジェンダー研究の視点を反映した歴史研究が活発になっています。これにともない、従来は「普遍」的なものと見なされてきた男性の歴史や経験の相対化をめざす「男性史」への関心も高まりつつあります。しかし、「男性史」を標榜する研究は、既存の女性史・ジェンダー史との関係において、その独自性が明確でないとの指摘もなされています。中心的な分析枠組みである「男性性/マスキュリニティ」という概念のさらなる検討が求められているのではないでしょうか。
 以上のような研究状況のなかで、政治史・社会史・社会運動史などの諸分野で、多様な政治・社会運動の参加者や、国家による動員の対象となったさまざまな人々が持っていた、「男性」としてのアイデンティティへの注目がなされるようになり、実証的な研究が蓄積されつつあります。これらの研究によって、「青年」「労働者」「兵士」といった社会的カテゴリーが構築される過程で、その構成員の「男性」としての資質が強調され、称揚されてきたことが明らかになっています。また、異性愛者の男性を中心とする社会規範のもと、女性や男性同性愛者も、男性性/マスキュリニティを備えているか否かを問われていたことも示されています。
 本特集では、近現代の政治や社会運動と、男性性/マスキュリニティとの関係を考えます。「男性であること」が歴史上いかなる意味を持ってきたのかという問題を取り上げた本企画が、ジェンダー史研究のさらなる活性化の契機となれば幸いです。(編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
 論   文 男性史はなぜ困難か ―フェミニズムの視点から―
Why Is It So Hard to Analyze History of Masculinities? :Rethinking from a Feminist Perspective
海妻径子
KAIZUMA Keiko
 論   文 『アメリカン・ボーイ』と第一次世界大戦
Juvenile Masculinity in The American Boy, 1917-1918
望戸愛果
MOKO Aika
 論   文 第一次大戦後の前期学生運動にみる男性性
Masculinity in the Post-WW I Student Movement in Japan
伊東久智
ITO Hisanori
 論   文 戦間期ドイツの「赤い伯爵」における義勇軍経験
The "Red Count" in Interwar Germany: Alexander Stenbock-Fermor and His Freikorps Experience
今井宏昌
IMAI Hiromasa
 論   文 軍隊とマスキュリニティ ―第二次世界大戦期イギリスにおける女性同性愛をめぐって―
Military Masculinity: Female Homosexuality in British Armed Forces during the Second World War
林田敏子
HAYASHIDA Toshiko
 私の原点 高群逸枝に出会って
服藤早苗
 書   評 佐々木虔一・武廣亮平・森田喜久男編著『日本古代の輸送と道路』
市大樹
 書   評 辻浩和著『中世の〈遊女〉』
安原眞琴
 書   評 白川部達夫著『近世の村と民衆運動』
福澤徹三
 書   評 奈良勝司著『明治維新をとらえ直す』
大石学
 書   評 中西聡・二谷智子著『近代日本の消費と生活世界』
加藤諭
 書   評 沢井実著『海軍技術者の戦後史』
畑野勇
 書   評 河西英通著『「社共合同」の時代』
黒川伊織
 紹   介 原秀三郎著『日本古代の木簡と荘園』 
森田喜久男
 紹   介 小川真和子著『海をめぐる対話 ハワイと日本』 
今野裕子
 紹   介 渡邊勲編著『三十七人の著者 自著を語る』
割田聖史
   *  2.11集会―各地の記録―

 

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