歴史学には、現代でも読まれるべき古典と呼ばれる多くの著作があります。本特集は、一九七〇年代から一九八〇年代に書かれた日本の西洋近現史研究の著作を取り上げます。これらは、刊行からすでに三〇年から半世紀を経ています。そのため、現在の学生にとっては、これらの著作もすでに「昔」のものとなっており、当時の研究の文脈だけでなく、使われている言葉すら理解できないものとなりつつあります。この意味において、本特集で取り上げる著作は、一定の世代にとっては同時代のものであるため、比較的近年のものといえるのですが、同時に、これらの著作を「古典」として位置付けるべき時が来ていると考えます。
一九七〇年代から一九八〇年代、西洋近現代史研究は、時代・地域ごとの専門分化が進展しました。他方で、この時代は、現地の史料へのアクセスがいまだ難しかった時期でもあり、現在の研究ほど史料を自由に使うことができませんでした。そのため、当時の西洋近現代史研究の著作は、個別実証にとどまることは許されず、「全体」を構想してより広い文脈から独自の歴史像を提示しようとする傾向を持っていたといえるでしょう。さらに、「全体」を構想するという行為は当時の政治的現実との思想的な格闘となり、そのことがこの時期の著作に特有の時代性を刻印付けています。
本特集は、このような「新しい古典」を、現在の研究に位置付けつつ、どう読み解いていくかを考えます。（編集委員会）
| ＊ | 特集にあたって | 編集委員会 |
| 論 文 | 今井宏『イギリス革命の政治過程』―「宮廷」対「地方」論の意義と限界
Significance and Limit of the Idea of Court vs. Country: IMAI Hiroshi, Political Process in the English Revolution |
岩井淳
IWAI Jun |
| 論 文 | 遅塚忠躬『ロベスピエールとドリヴィエ』―フランス革命研究の転換点―
The Turning Point of French Revolution Study: CHIZUKA Tadami, Robespierre and Dolivier |
佐々木真
SASAKI Makoto |
| 論 文 | 良知力『向う岸からの世界史』―「歴史なき民」再考―
Reconsidering the concept of ‘nations without history’: RACHI Chikara,World History from the Opposite Shore |
中澤達哉
NAKAZAWA Tatsuya |
| 論 文 | 木谷勤『ドイツ第二帝制史研究』―国家を歴史的にとらえ直すために―
Revisiting a Theory of the State: KITANI Tsutomu,Imperial Germany |
割田聖史
WARITA Satoshi |
| 論 文 | 溪内謙『現代社会主義の省察』―スターリン体制解明の見取図―
An Explicative Sketch of the Stalinist Regime: TANIUCHI Yuzuru,Reflections on Modern Socialism |
中嶋毅
NAKASHIMA Takeshi |
| 論 文 | 清水知久・高橋章・富田虎男『アメリカ史研究入門』―アメリカという問題と格闘する―
Tackling with America as a Problem: SHIMIZU Tomohisa, TAKAHASHI Akira & TOMITA Torao, Introduction to American History |
中野聡
NAKANO Satoshi |
| 書 評 | 佐藤文子著『日本古代の政治と仏教』
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岡野浩二
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| 書 評 | 矢野建一著『日本古代の宗教と社会』
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小倉慈司
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| 書 評 | 海老澤衷編著『中世荘園村落の環境歴史学』
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田村憲美
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| 書 評 | 鈴木直樹著『近世関東の土豪と地域社会』
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佐藤孝之
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| 書 評 | 久保田裕次著『対中借款の政治経済史』
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千葉正史
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| 書 評 | 日本植民地研究会編『日本植民地研究の論点』
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檜山幸夫
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| 書 評 | 山田朗著『昭和天皇の戦争』
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永井和
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| 紹 介 | 藤本清二郎著『和歌の浦・玉津島の歴史』
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佐藤顕
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| 紹 介 | 東京歴史科学研究会編『歴史を学ぶ人々のために』
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日髙智彦
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| 紹 介 | 李盛煥・木村健二・宮本正明編著『近代朝鮮の境界を越えた人びと』
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三ツ井崇
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