近世の日本の対外関係は「鎖国」と呼ばれることがあり、現在も江戸時代は「鎖国」の時代であったというイメージが強いかもしれません。しかし、近年の研究により、近世の日本が完全に孤立していたという捉え方は見直されています。その結果、日本が東アジアの国や地域と関係を結んでいたことや、いわゆる「四つの口」を通して世界とつながりを持っていたことが明らかになってきました。
近世に海外から貿易・布教のために日本を訪れた人々や、境界地域で日本と接触した人々は、日本の政治や社会をつぶさに観察し、記録に残しました。現在、海外の研究機関には、近世日本に関わる文字史料・画像史料や、外国人が日本で収集したモノ資料が豊富に所蔵されています。しかし、外国語で書かれた史料は読み解くことが難しいもの、対外関係史研究の専門家が用いるものという印象が強く、その所在状況や利用方法について、広く知られていないのではないでしょうか。
本特集では、日本国内や海外において、近世日本に関する在外史料を閲覧・利用する方法や、史料を用いた最新の研究成果を紹介します。在外史料を読み解くことは、日本語史料には書かれていない近世社会の様相を知ることや、「日本史」「外国史」という枠組みを取り払い、世界史的な動向のなかで「近世」という時代を捉え直すことにつながります。本特集を通じて、読者が在外史料にアクセスするきっかけが生まれ、それが持つ可能性が広く伝われば幸いです。(編集委員会)
* | 特集にあたって | 編集委員会 |
論 文 | 近世日本に関わる在外史料研究の現在
Review: Studies of Historical Documents Related to Early Modern Japan in Foreign Countries |
吉村雅美
YOSHIMURA Masami |
論 文 | イエズス会日本年報の活用をめぐって
Utilizing “Jesuit Annual Letters” as Historical Sources |
清水有子
SHIMIZU Yuko |
論 文 | 日蘭関係に関するオランダ語史料―日本商館文書を中心に―
Dutch Historical Sources Related to the Study of Japanese-Dutch Relations |
松井洋子
MATSUI Yoko |
論 文 | 清朝档案による近世日中関係の研究へのアプローチ
Utilizing Qing Imperial Documents in the Study of Early-Modern Sino-Japanese Relations |
彭浩
PENG Hao |
論 文 | 韓国所在の近世日本関係史料について―近世日朝関係史料を中心に―
Introduction to Japan-Related Sources in South Korea |
酒井雅代
SAKAI Masayo |
論 文 | ロシア史料の調査と共同研究
Collaborative Research Project: Russian Historical Sources Concerning Japan |
保谷徹
HOYA Toru |
論 文 | 近世後期日本知識人の日朝関係認識―文化度通信使との接触を通じて―
Japanese Intellectuals’ Perceptions of Japan-Korea Relations in the Late Tokugawa Period |
松本智也
MATSUMOTO Tomoya |
歴史の眼 | まちの歴史にリンチを刻む―アメリカにおける人種暴力の記憶化―
|
坂下史子
SAKASHITA Fumiko |
書 評 | 安田常雄編著『国策紙芝居からみる日本の戦争』
|
鶴見太郎
|
書 評 | 西川祐子著『古都の占領』
|
平井和子
|
紹 介 | 村井章介著『古琉球』
|
森田喜久男
|
紹 介 | 東京大学史料編纂所古写真研究プロジェクト編『高精細画像で甦る一五〇年前の幕末・明治初期日本』
|
三村昌司
|
* | 【会告】会費口座振替に関するお知らせ
|
|