『歴史評論』2019年3月号(第827) Historical Journal(REKISHI HYORON) March 2019 vol.827

特集/三・一運動一〇〇年 The 100th Anniversary of the March First Movement

定価 940円  編集長ブログも随時更新中。


 一九一九年三月一日、植民地支配下の朝鮮で起こった抵抗運動である三・一運動から、今年で一〇〇年を迎えます。隣国韓国では、三・一運動は常に国家の正統性を確認する歴史的根拠とされてきました。一〇〇周年を控えたここ数年は特に運動の抵抗精神を記念・記憶するためのさまざまな行事や企画が行われてきました。一般的に、この運動は三月一日のソウルにおける独立宣言書の配布と学生・市民の示威活動のイメージでとらえられています。しかし、このようなとらえ方はこの運動の断片的な理解に留まっています。実際には、三月一日以後、数か月にわたって、抵抗運動はさまざまな形をとって朝鮮の各地、ロシア沿海州、中国東北地域などへと広がりました。よって、この運動は多面性を持つ運動群の総体であったととらえるのが妥当でしょう。
 三・一運動の背景には、国内的/国際的な要因がそれぞれに存在しました。その担い手の性格も単純ではなく、それだけに運動は多面的でありました。また、三・一運動は朝鮮の人びとの生活にも大きな影響を与えました。これらの要素はいずれも、日本の朝鮮支配の性格について問うための重要な論点となります。本特集では、おもに日本における三・一運動研究の現状を提示したいと思います。研究史上の論点を整理し、これまで気づかれなかった新たな視角を提示することで、朝鮮植民地支配がどのようなものであったかについて改めて考えるきっかけとなれば幸いです。(編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
論   文 三・一運動研究の諸相 ―特集に向けて―
Various Perspectives on the March First Movement
三ツ井崇
MITSUI Takashi
論   文 日本における三・一運動研究の動向
The March First Movement: The State of the Field in Japan
林雄介
HAYASHI Yusuke
論   文 三・一運動と国際的背景
The March First Movement and Its International Backgrounds
長田彰文
NAGATA Akifumi
論   文 「独立万歳」の政治文化と民衆
Political Culture of "Hurrah for Independence" and the People
趙景達
CHO Kyeungdal
論   文 三・一運動における「キリスト教徒」と「教会」
The “Church” and the “Christians” in the March First Movement
松谷基和
MATSUTANI Motokazu
論   文 李光洙のハングル創作と三・一運動
Yi Gwang-su’s Hangle Writing and the March First Movement
波田野節子
HATANO Setsuko
歴史のひろば 「幽霊」の位相をかき乱すために ―和田春樹『「平和国家」の誕生』と権赫泰『平和なき「平和主義」』を手がかりに―
高榮蘭
歴史の眼 政府の公文書管理を考える ―「アーキビストの職務基準書」を手がかりとして―
坂口貴弘
科学運動通信 二〇一八年度陵墓懇談会(東京・宮内庁書陵部)参加記
森岡秀人
森田喜久男

 書  評 山本孝文著『古代朝鮮の国家体制と考古学』
橋本繁
 書  評 工藤航平著『近世蔵書文化論』
井上泰至
 書  評 飯塚一幸著『明治期の地方制度と名望家』
中西啓太
 書  評 李穂枝著『朝鮮の対日外交戦略』
森万佑子
 書  評 東日本部落解放研究所著『東日本部落史』
高垣亜矢
   * 二〇一九年度 歴史科学協議会総会報告
 
 

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