『歴史評論』2019年2月号(第826) Historical Journal(REKISHI HYORON) February 2019 vol.826

特集/前近代ユーラシア東半における文化的接触と摩擦 Cultural Contact and Friction in the Eastern Half of Eurasia before the Modern Period

定価 940円  編集長ブログも随時更新中。


 近年の歴史研究では、グローバル・ヒストリー研究を中心に、世界が一体化に向かい始めた時代として、モンゴル帝国時代や、一六世紀から一八世紀の近世期にあらためて大きな関心が寄せられています。この時代、世界各地で人の移動とモノや情報のやりとりが、地域の枠を超えて拡大しました。なかでも、ヨーロッパとアジア諸地域との間の交流、そして、交流の合間に見られた政治的、文化的摩擦については、これまでも様々に論じられてきています。その一方で、それぞれに特徴的な文化をもったアジア諸地域間の交流のあり方については、充分に論じられてきているとは言えません。ヨーロッパの視点に立つ「大航海時代」という時代認識が見えにくくするアジア域内の活発な交流と、それを担った現地の人々にも目を向ける必要があります。アジア諸地域の文化変容を考察する上で、アジア域内の異なる文化との交流を視野に収めることが重要であるからです。
 本特集では、一四世紀から一八世紀のユーラシアの東半分を舞台とした、異なる文化の間の接触の具体的な事例を紹介します。いずれの事例も、イスラーム教徒や彼らが多数を占める地域で成立、発展した文化や物産と密接に関わっています。この時代のアジア域内の交流において、イスラーム教徒が重要な役割を担っていたことの現れとも言えるでしょう。近代以前の世界の歴史発展を、ヨーロッパ、あるいは、日本が位置する東アジアからとは異なる視座で捉え直す手掛かりに、本特集がなることを期待します。 (編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
論  文 アジアにおける『ハムザ物語』―イスラーム、ペルシア語、フロンティア―
The Romance of Amir Hamza in Asia
近藤信彰
KONDO Nobuaki
論  文 明末清初の激動と中国ムスリム
Chinese Muslims in Transformation during the Late Ming and Early Qing Period
中西竜也
NAKANISHI Tatsuya
論  文 近世日本におけるイラン・インド染織品の輸入とインド洋交易
Import of Iranian and Indian Textiles in Pre-Modern Japan and the Indian Ocean Trade
阿部克彦
ABE Katsuhiko
論  文 南インド宮廷文学にみるムスリム表象
Representations of Muslims in South Indian Courtly Literature
太田信宏
OTA Nobuhiro
論  文 14世紀イランに伝えられたインドの歴史
A Note on the History of India as Depicted in Two Persian Chronicles in Fourteenth Century Iran
小倉智史
OGURA Satoshi
論  文 日中戦争と対独賠償問題―一九三七―三八年の南京におけるドイツ被害から―
The Sino-Japanese War and the Problem of the War Loss Indemnity to Germany
清水雅大
SHIMIZU Masahiro
文化の窓 〔リレー連載 風土と向き合う―私の現場からE〕
「沖縄のなかの世界史発掘プロジェクト」の実践紹介

池上大祐
書  評 鈴木靖民著『古代日本の東アジア交流史』
赤羽目匡由
書  評 藤森馨著『古代の天皇祭祀と神宮祭祀』
榎村寛之
書  評 宮古文尋著『清末政治史の再構成』
田中比呂志
書  評 橋本伸也編著『せめぎあう中東欧・ロシアの歴史認識問題』
鈴木健太
紹  介 今泉隆雄著『古代国家の地方支配と東北』
永田一
 

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