『歴史評論』2019年1月号(第825) Historical Journal(REKISHI HYORON) January 2019 vol.825

特集/近世山里の地域社会史 "Local Social Histories of Early Modern Mountain Villages"

定価 940円  編集長ブログも随時更新中。


 日本列島の約七割が森林に覆われています。これは伐採と造林とをうまく循環させた結果です。しかし現在は木材価格の低迷や過疎により、林業に従事する人も減りました。その結果、森林の保全・維持が更新されず、放置される森林が増えて荒廃が進んでいます。一方で、人びとが管理・利用することで維持されてきた集落に近い山を「里山」として重視し、その保全や活用が見直されてもいます。ただしこれも、森林を生業の場として利用するわけではありません。
 翻って江戸時代の社会では、森林は重要な生業の場でした。たとえば百姓にとって、家屋の建材や暖房などに必要な薪炭、耕作に不可欠な肥料などを生産・採取する場として、森林は貴重な資源でした。したがって、ときに過度の森林利用が荒廃の危機を招くこともありました。森林や「里山」保全の現状を理解するには、歴史的な経緯の検討が不可欠なのです。
 そこで本特集では、江戸時代の山里(山間の村)の社会構造を個別具体的に検討し、その特質を明らかにすることを目指します。こうした作業は、日々を暮らす民衆に視座を据えて、地域や村内部の社会のありかたを踏まえた上で、地域の全体像を総合的に明らかにしようとする近年の研究動向を視野に入れています。そのため、それぞれ対象とする地域を限定して、山里の実態を描くことに努めました。これによって、時代や地域により、それぞれ固有な山里のありようを理解していただけたら幸いです。(編集委員会)

  *  天皇の代替わりと時代認識 池享
  *  特集にあたって 編集委員会
論    文 無高山村の支配と貢租 ―信濃国秋山をめぐって―
Taxation and Administration of ‘Mutaka’ (unassessed) Mountain Villages in Edo Period Japan
白水智
SHIROUZU Satoshi
論    文 近世後期の焼畑と村落構造
A Study of Social Relationships in Early Modern Japanese Slash-and-Burn Agricultural Regions
町田哲
MACHIDA Tetsu
論    文 町人地と山林用益権
Residential Areas for Townspeople and Usufructuary Right of Mountain and Forest at Iida District in the Edo Period
多和田雅保
TAWADA Masayasu
論    文 「山里」村落の社会構造 ―一七世紀の信州虎岩村―
Social Structure of a Village with “Hills and Plains”
牧原成征
MAKIHARA Shigeyuki
論    文 丘陵地帯の村と山
A Hill Country Village and Mountains
後藤雅知
GOTO Masatoshi
科学運動通信 荒井信一さんを偲ぶ会に参加して
齋藤一晴
書    評 市大樹著『日本古代都鄙間交通の研究』
渡部育子
書    評 田中秀樹著『朱子学の時代』
小川和也
書    評 五野井隆史著『キリシタン信仰史の研究』
大橋幸泰
書    評 須田努著『三遊亭円朝と民衆世界』
青木然
追    想 追想 北島万次氏
堀新
追    想 浜林正夫先生を追悼する
岩井淳
追    想 浜林正夫さんを偲ぶ
宮地正人
   二〇一八年『歴史評論』総目次

 

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