二〇世紀末以降、世界のグローバル化に伴い、「新しい世界史」や「グローバル・ヒストリー」を標榜する研究が続々と生み出されました。しかしこうした研究では、権力や資本、人やモノの移動などが主に論じられ、思想が正面から扱われることはほとんどありませんでした。
これに対し現在、思想史研究に大きな変化が起こっています。「偉大な思想家」と彼らが遺した「名著」を対象としてきた思想史研究は、「国際論的転換」（アーミテイジ『思想のグローバル・ヒストリー』）という転機を迎えました。そこでは、長期的かつ世界的な視野のもとで、思想家やその著作、理念が国境や地域、さらには時代の壁を越えて、広範に受容される痕跡が追究されます。この「グローバル＝インテレクチュアル・ヒストリー」とでも言うべき新潮流では、長らく著名な思想家の陰に隠れていた人物に光が当てられ、これまで近代化といった視点から語られてきた思想的運動が内包しているさまざまな側面が浮かび上がります。さらに、外来の思想と民衆との意外な接点が明らかになる一方、エリートたちの世界認識の実態について論じられます。
現在進行形のグローバル化がもたらす困難がますます強く意識され、世界のあちこちで新しい壁が築かれつつあるようにみえる今日、グローバル化の歴史を思想史の観点から論ずることは重要でしょう。ともあれ、まずは驚きに満ちた思想史研究の最新の成果をご堪能ください。（編集委員会）
| ＊ | 特集にあたって | 編集委員会 |
| 論 文 | 歴史の中のギュルハーネ勅令
The Historical Roots of the Gülhane Rescript |
佐々木紳
SASAKI Shin |
| 論 文 | G・ボローテと国際政治経済学の誕生 ―『都市盛衰原因論』の国際思想史―
G. Botero and the Birth of International Political Economy |
石黒盛久
ISHIGURO Morihisa |
| 論 文 | 近世日本の清聖諭受容と民衆教化
Acceptance of the Qing Dynasty Sacred Edict and the Edification of Common People in the Edo Era |
殷暁星
YIN Xiaoxing |
| 論 文 | 風聞と紛争ー ―古賀精里の思想世界とロシア認識―
Rumor and Conflict: The Thought of Koga Seiri (1750-1817) and his Recognition of Russia |
清水光明
SHIMIZU Mitsuaki |
| 論 文 | ヒューマニストたちの挑戦と運命 ―イタリア・イベリア両半島における―
The Renaissance Humanists between Politics and Cultures |
根占献一
NEJIME Kenichi |
| 論 文 | パラケルスス、ゲーテ、ホムンクルス
Paracelsus, Goethe, and Homunculus |
村瀬天出夫
MURASE Amadeo |
| 歴史のひろば | 女性の身体 ―フランスの女性史研究の歩みとダンの近著にみる歴史学の最前線―
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上條敏子
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| 文化の窓 | 【文化の窓／リレー連載 風土と向きあう――私の現場から⑤】 世界史に開かれる地域史 ―静岡歴史教育研究会の活動― |
岩井淳
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| 科学運動通信 | 淡輪ニサンザイ古墳陵墓営繕工事立会見学参加記
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森岡秀人
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科学運動通信 | シンポジウム「歴史教科書いままでとこれからⅩⅣ」参加記
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稲川絵実香
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| 書 評 | 藤原敬士著『商人たちの広州』
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新居洋子
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| 書 評 | 平田雅博・原聖編『帝国・国民・言語』
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新居洋子
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| 書 評 | 伊藤定良著『近代ドイツの歴史とナショナリズム・マイノリティ』
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鍋谷郁太郎
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| 書 評 | 中村秀之著『特攻隊映画の系譜学』
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| 紹 介 | 吉浜忍著『沖縄の戦争遺跡』
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佐治暁人
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| 紹 介 | 下垣仁志著『古墳時代の国家形成』』
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森田喜久男
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| 紹 介 | 木村直樹、牧原成征編『十七世紀日本の秩序形成』
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藤方博之
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| 紹 介 | 中野敏男・板垣竜太・金昌・岡本有佳・金富子編著『「慰安婦」問題と未来への責任』
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土野瑞穂
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