二〇世紀は「極端な時代」だったと言われます。アジアやアフリカにおける西洋列強や日本による苛烈な侵略戦争、大量死をもたらした二度の世界大の戦争やその後の様々な独立戦争、冷戦期における「熱い戦争」、そしてまた、いまだにその死者数の概要すらも分からない白色や赤色の国家テロがありました。その反面、人類史上かつてない程の多くの人々が、いわゆるリベラル・デモクラシーや物質的な豊かさを享受しました。最大数の殺戮に十分な反省が示されない中で、最大数の幸福を実現しようとしたのが二〇世紀の夢だったと言えるでしょう。
ところが、最大数の幸福という功利主義的な楽観とともに、より深淵で人間らしい営みも生まれました。人々が暴力をもたらした責任を追及した時代だったのです。「ラッセル法廷」をはじめとする民衆法廷、ルワンダやユーゴスラヴィアの国際刑事法廷、ラテンアメリカや南アの真実委員会など、様々な形での正義の追求がなされました。これらの営みは、曲がりなりにも暴力に対する反省と平和への希求という普遍的価値を下支えしてきました。
二一世紀の今日、対テロ戦争という新たな戦争が生じ、暴力は多様化し、民主主義は後退し、非暴力という理念は否定されつつあります。だからこそ、暴力に対する責任追及の軌跡を追ってみたいのです。そのような探求を通してこそ、この新たな戦争と暴力の時代を脱する方向性を見出すことができるでしょう。(編集委員会)
* | 特集にあたって | 編集委員会 |
論 文 | ラッセル法廷から半世紀 ―世界は正義とどう向かい合ってきたか―
Half Centennial of the Russel Tribunal and How the World has Tackled with the Issues of International Justicey |
中野聡
NAKANO Satoshi |
論 文 | ラッセル法廷と国際反戦運動の胎動―「ベトナムにおける戦争犯罪調査日本委員会」と民族的抵抗への共感を中心に―
The Russell Tribunal and the Rise of International Anti-war Movement |
藤本博
FUJIMOTO Hiroshi |
論 文 | 東京裁判の個人責任論
Individual Responsibility at the Tokyo Trial |
戸谷由麻
TOTANI Yuma |
論 文 | 民衆法廷を継承する精神 ―原発民衆法廷の経験を手掛かりに―
The Spirit of International Criminal Tribunals: from the Vietnam War to the Fukushima Daiichi Nuclear Disaster |
前田朗
MAEDA Akira |
論 文 | ニュルンベルク裁判とラッセル法廷
The Nuremberg Trials and the Russell Tribunal |
芝健介
SHIBA Kensuke |
書 評 | マイケル・ビルトン、ケヴィン・シム著、藤本博、岩間龍男監訳、葛谷明美、後藤遥奈、堀井達朗訳『ヴェトナム戦争ソンミ村虐殺の悲劇』
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生井英考
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第52回大会準備号 歴史における危機と復興の諸相V |
大会テーマの設定にあたって
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全国委員会
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第52回大会準備号 歴史における危機と復興の諸相V |
《第1日目 占領と復興》米軍基地下の京都 ―占領から日米安保体制へ―
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大内照雄
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第52回大会準備号 歴史における危機と復興の諸相V |
《第1日目 占領と復興》中東における占領と復興 ―イスラエル建国とイラク、そして日本―
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田浪亜央江
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第52回大会準備号 歴史における危機と復興の諸相V |
《第2日目 首都の戦乱と復興》戦国京都都市論 ―首都の社会変動と戦乱―
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仁木宏
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第52回大会準備号 歴史における危機と復興の諸相V |
《第2日目 首都の戦乱と復興》二度の開封陥落と中心性の移動 ―中国都城史の転換点としての靖康の変―
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久保田和男
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第52回大会準備号 歴史における危機と復興の諸相V |
《第2日目 首都の戦乱と復興》三十年戦争と帝国都市アウクスブルク ―二宗派共存都市の危機と復興―
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高津秀之
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紹 介 | 関口裕子著『日本古代女性史の研究』
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森田喜久男
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紹 介 | 児玉幸多先生論集慣行委員会編『近世史研究遺文』
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野尻泰弘
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紹 介 | アジア民衆史研究会・歴史問題研究所編『日韓民衆史研究の最前線』
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三ツ井崇
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紹 介 | 杉並歴史を語り合う会・歴史科学協議会編『隣国の肖像』
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嶽本新奈
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加盟組織の活動報告
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加盟組織の機関誌案内
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