『歴史評論』2018年10月号(第822) Historical Journal(REKISHI HYORON) Oktober 2018 vol.822

特集/本当の意味での歴史遺産の活用とは "Proper Utilization of Historical Heritage"

定価 940円  編集長ブログも随時更新中。


 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、「観光立国日本」を目指す動きが加速化しています。そのような動きの中で、史跡や伝統的建造物群など歴史遺産について、保存を優先させるのではなく「観光資源」として活用すべきであるという意見が声高に主張されるようになりました。現在進行中の文化財保護法の改定は、その延長線上にあるものです。
 しかし、「観光資源」云々以前に、歴史遺産はこれまでも歴史を活かした地域づくりやまちづくりの場で活用されてきました。その際に、地域の博物館や文書館、教育委員会、大学などに籍を置く研究者と市民との協働があったという事実を忘れるわけにはいきません。
 この特集では、各地域に拠点を置いて研究に取り組んで来られた方々に、それぞれの地域社会に残されている歴史遺産をどのように掘り起こしてきたのか、それをどのように活用することで地域社会を活性化させることができるのか、こういった点について語っていただきます。同時に、地域社会の活性化を謳いながらも、体制がととのえられない状況下で文化財行政を進めざるを得ない現状についても明らかにし、歴史遺産の活用のあり方と、その中で歴史研究者が果たすべき役割について考えてみたいと思います。
 この特集を通じて、歴史遺産の活用のあるべき姿について議論が深まることを願います。(編集委員会)

  *  特集にあたって 編集委員会
論 文 歴史遺産と地域連携 ―飯田・下伊那での実践から―
Historical Heritage and Local Community
吉田伸之
YOSHIDA Nobuyuki
論 文 平泉・世界文化遺産の現場にて
Hiraizumi: On-Site Practice at a World’s Cultural Heritage
入間田宣夫
IRUMADA Nobuo
論 文 博物館・資料館とボランティア ―地域の歴史的・文化的資源と博物館・資料館を繋ぐ―
Museum and the Activities of Volunteers: Bridging Local Historic Cultural Resources and the Museum
谷口榮
TANIGUCHI Sakae
論 文 学芸員の情報発信 ―神話を活かしたまちづくりへの参加―
Museum Workers and the Method of Information Provision: Community Building Based on Local Myths
森田喜久男
MORITA Kikuo
論 文 学校資料と歴史学
History and Historical Sources of School
大平聡
OHIRA Satoshi
論 文 文化財保護行政の動向と地域の歴史遺産 ―文化財保護法の改定問題と文化財活用の方向性―
Trends of Cultural Property Protection Administration and Historical Heritage in a Region
吉田政博
YOSHIDA Masahiro
歴史の眼 限界に直面する博物館と学芸員
君塚仁彦
歴史の眼 在日朝鮮人の民族教育と自決権 ―朝鮮学校「高校無償化」排除と朝鮮民主主義人民共和国―
金誠明
科学運動通信 歴史学研究会総合部会例会「天皇の身体と皇位継承―歴史から考える―」参加記
草薙志帆
書 評 小川剛生著『中世和歌史の研究』
深津睦夫
書 評 今井勇著『戦後日本の反戦・平和と「戦没者」』
波田永実
書 評 ロジャース・ブルーベイカー著、佐藤成基、橋誠一、岩城邦義、吉田公記編訳『グローバル化する世界と「帰属の政治」』
小田原琳
紹 介 吉浜忍著『沖縄の戦争遺跡』
佐治暁人
紹 介 部落問題研究所編『身分的周縁と部落問題の地域史的研究』
後藤雅知
紹 介 ジョー・グルディ、D・アーミテイジ著/平田雅博、細川道久訳『これが歴史だ!』
源川真希
 

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