『歴史評論』2018年8月号(第820) Historical Journal(REKISHI HYORON) August 2018 vol.820

特集/日常生活から見つめる戦争 "War as Seen from Everyday Life"

定価 940円  編集長ブログも随時更新中。


 一九四五年に日本が敗戦してから、七三回目の夏を迎えます。戦争体験者が次々と世を去るなか、教育現場をはじめとした社会のいたるところで、風化しつつある体験の継承が行われています。戦争を知らない世代の私たちにとって、戦争の悲惨さを学び、語り継いでいくことは非常に大切ないとなみです。 とはいえ、いつの間にか、教育現場などで戦争の悲惨さ、あるいは日本の加害行為が語られる際に、「平和な時代に生まれてよかった」、「今が平和な社会でよかった」という感想ばかりが生み出されていないでしょうか。これらの感想は、戦争の本質を理解しているようでいて、新たな戦争を十分に抑止する力とはなりえないように思います。戦争を現代社会とは切り離された過去の出来事、海の向こうの出来事とせず、今を生きる私たちの問題としていかに捉えていくのかということが、語る側にも受け手の側にも問われています。これが本特集の企画の出発点です。
 本特集では、凄惨さそのものに焦点を当てるのではなく、銃後や占領地・植民地の戦時体制の構築過程、そして戦争体験が社会に定着する過程に注目しました。暮らしの延長線上に戦争を見つ めるという本特集の試みを通じて、いかにして戦争を私たち自身の問題として語り、捉えていくのかを、読者の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。 (編集委員会)

  *  特集にあたって 編集委員会
論 文 日常生活と戦争 ―銃後社会史研究の課題をめぐって―
War and Everyday Life: Major Issues in Social History of the Home Front
大串潤児
OGUSHI Junji
論 文 ドイツ占領下ワルシャワの売買春
Prostitution in Warsaw under German Occupation
田野大輔
TANO Daisuke
論 文 戦時日本農村と満洲移民
Rural Society in Wartime Japan and “Japanese Colonists in Manchuria”
細谷亨
HOSOYA Toru
論 文 戦時期植民地朝鮮における防空体制の構築 ―警防団を中心に―
Construction of the Air Defense System in Colonial Korea during the Wartime
松田利彦
MATSUDA Toshihiko
論 文 「戦争体験論」の成立
The Formation of “War Experience” Discourses
赤澤史朗
AKAZAWA Shiro
投 稿 朝鮮・琉球国の地位の変遷と確定 ―幕末「通信国」観の前史として―
The Changing Status of Joseon and Ryukyu in Early Modern Japan
木土博成
KIDO Hironari
歴史の眼 二つの天皇代替わりをめぐる論説
後藤致人
書 評 伊藤聡著『神道の形成と中世神話』
太田直之
書 評 山本明代、パプ・ノルベルト編著『移動がつくる東中欧・バルカン史』
戸谷浩
書 評 望戸愛果著『「戦争体験」とジェンダー』
松原宏之
  * 二・一一集会 ―各地の記録A―
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