『歴史評論』2018年4月号(第816) Historical Journal(REKISHI HYORON) April 2018 vol.816

特集/日本中世の神道的世界を探る Exploring the World of Medieval Shintoism

定価 940円  編集長ブログも随時更新中。

 現政権の帝国日本へ回帰するかのような政策姿勢や、社会全体の持つ閉鎖的・内向的な雰囲気のなか、若い世代のスピリチュアルなものへの志向もあいまって、現在、神社や神道への関心が高まっています。メディアもそれに迎合するかのように、例えば、縁結びが叶うという出雲大社への「女子旅」や、明治神宮における「パワースポット」としての清正井(加藤清正が掘削したという伝承のある井戸)などを取りあげては、神々の〈悠久の伝統〉を持ち出し、〈日本人のアイデンティティ〉を喧伝しています。  現代歴史学は、このような言説には多くの誤りが含まれており、いわゆる神道は中世以降にアジア諸思想の融合・軋轢のなかで形成されたこと、現在みる神社は明治の神仏分離・廃仏毀釈の影響が強く、古代の姿とは大きく異なることなどを明らかにしてきました。しかしこれらの研究成果は、一般にはほとんど共有されていません。  そこで本特集では、かつては荒唐無稽と無視されてきた中世神話や、当時の人々のケガレ観念や病気への向き合い方、神社という空間の歴史的変遷などを紹介することを通じて、神社・神道をめぐる現状の認識に一石を投じることを目指しました。  神道的世界の豊穣なありかたを歴史学、とくに中世史の視点で見直した本特集が、読者の皆さんにとって、混迷する現代社会を批判的に捉え直すきっかけとなるよう願います。(編集委員会)
特集にあたって 編集委員会
論   文  中世神道・中世日本紀研究の現状
The Current Situation of the Study Regarding Shinto and Nihongi of Medieval Japan
伊藤聡
ITO Satoshi
論   文  中世前期の病気治療における神とモノノケ
“KAMI”(Gods) and “MONONOKE”(Evil Spirits) in Medical Treatment of Early Medieval Japan
小山聡子
KOYAMA Satoko
論   文  女性の穢の成立
On the Development Ideas of Women's Impurity
片岡耕平
KATAOKA Kohei
論   文  生れ死ぬるけがらひ
Medieval Ideas of Impurity in Birth and Death
水谷類
MIZUTANI Tagui
論   文  中世以降における神社林の変遷
Changes of Grove of Shrine Forests since the Middle Ages
小椋純一
OGURA Junichi


歴史の眼 歴史から隠されたクラシックの女性作曲者たち
――音楽史教科書では女性作曲家はどう扱われているか?
小林緑
歴史の眼 「特別の教科 道徳」の教科書と安倍教育再生のねらい
俵義文
文化の窓 【リレー連載 風土と向きあう――私の現場からC】
紀伊半島が世界史を変える
海津一朗
私の原点 戸田芳實「中世初期農業の一特質」・高橋昌明「日本中世農業生産力水準評価の一視点」 木村茂光
書   評  北康宏著『日本古代君主制成立史の研究』
篠川賢
書   評  大橋幸泰著『近世潜伏宗教論』
奈倉哲三
紹   介  服藤早苗編著『平安朝の女性と政治文化』
樋口健太郎
紹   介  戸谷浩著『ブダペシュトを引き剥がす』
山本明代


記   録 

 

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