『歴史評論』2017年5月号(第805) Historical Journal(REKISHI HYORON) May 2017 vol.805

特集/再考 網野善彦 “Yoshihiko Amino:A Reconsideration”

定価 940円  編集長ブログも随時更新中。


 網野善彦は、日本中世史を専攻する歴史家でした。しかし、網野は自身の専門分野にとどまらず歴史学界全般に対して問題提起を行いました。たとえば、日本史における「日本」そのものを問い直し、「海民」や「職人」といった「非農業民」の存在を指摘し、それらを捨象してきた学界の現状を「水田中心史観」に陥っていると批判しました。その作品は、映像や文学などクリエイティブな分野にも影響を与え、多くの読者を獲得しました。
 網野の研究については、著作集が刊行され、いくつかの雑誌で特集号が組まれるなど、すでに多くの研究者によって整理がなされています。また、その著作論文に対して、歴史学あるいは他の分野からさまざまな評価が寄せられています。
 しかし、没後10年を経過した現在、最新の研究成果にもとづき網野の仕事を多角的に検証することが必要であると考えます。
 網野の最初の論文は、1951年1月に本誌27号に掲載された「若狭における封建革命」でした。後に網野自身は、この論文を全否定していますが、本誌としては、以後の網野自身の研究の歩みを幅 広い視点から検討することによって、現在の歴史学の課題を再考するきっかけを創り出すことができたらと思います。また、これから歴史学を学ぼうとする方々に新たな歴史像を構築することの重要性を認識していただけたらと願う次第です。(編集委員会)
  *   特集にあたって 編集委員会
 論   文  網野善彦―その研究の軌跡と克服すべき課題―
The Legacy and Challenge of Yoshihiko Amino
森田喜久男
MORITA Kikuo
 論   文  網野善彦の百姓論・平民論
Yoshihiko Amino and the Study of “Hyakusho” and “Heimin”
木村茂光
KIMURA Shigemitsu
 論   文  網野女性史再考―「聖なる性・女性」のゆくえ―
Sacred Sexuality and Women: A Reconsideration of Amino’s Understanding of Women’s History
服藤早苗
FUKUTOU Sanae
 論   文  網野善彦の「山民」概念
Sanmin in Yoshihiko Amino’s Historical Studies
米家泰作
KOMEIE Taisaku
 論   文  網野善彦と「自然そのものの「理論」」
Did Yoshihiko Amino Propose the History of the “Logic of Nature”?
橋本道範
HASHIMOTO Mithinori
私の歴史研究 85年の自分史抄録―「植民地二世」としての朝鮮・韓国・中国民衆への加害責任を背負って―
松尾章一
《聞き手》三村昌司・服藤早苗
科学運動通信 吉見裁判高等裁判所判決の不当性
高田雅士
 書   評 小澤実・長縄宣博編著『北西ユーラシアの歴史空間』
田中良英
 書   評 藤野裕子著『都市と暴動の民衆史』
能川泰治
 書   評 官田光史著『戦時期日本の翼賛政治』
米山忠寛
 会   告  歴科協創立50周年記念事業募金協力のお願い 歴科協創立
50周年記念
事業企画委員会
 会   告  創立50周年記念シンポジウムのお知らせ 歴科協創立
50周年記念
事業企画委員会
 声   明  吉見裁判における東京高裁の不当決対する抗議声明 歴史科学協議会
 

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