『歴史評論』2017年3月号(第803) Historical Journal(REKISHI HYORON) March 2017 vol.803

特集/「家中」―武士たちの生存戦略 "Kachu"-Samurai's Strategies for Livelihood

定価 940円  編集長ブログも随時更新中。


 NHKの大河ドラマでは、2年続いて戦国時代が舞台となり、関連する書籍・講演などもさかんに企画されています。勢力拡大や生き残りをめぐる武士たちの激しいせめぎ合いが、この時代に関心が集まるポイントの一つといえるでしょう。「家中」とは、こうしたせめぎ合いのなかから生み出されてきた、武士たちによる新しい結集の形態です。「家中」は、さまざまな出自をもつ武士を、主君の「家(御家)」のなかに「家臣」として取り込み、統制しようとするものでした。社会が安定化した江戸時代、武士の集団は役人の組織という印象で捉えられがちですが、主君のもとに束ねられた「家中」である点では、戦国時代に生まれた性質を受け継いでいるといえます。この集団は、廃藩後には旧家臣たちの互助や心情的なまとまりのために機能することになります。
 本特集では、戦国時代から廃藩後までを射程に入れ、「家中」を形成・維持しようとする動きを具体的に取りあげます。その際、主君による統制ばかりではなく、「家中」に取り込まれた家臣側の実態にも目を向けます。各時代の「家中」の内実を、武士たちが生き残りを模索する動向として捉えることが、本特集のねらいです。
 各論考では、ドラマであまり描かれない武士の側面を分析しています。本特集を契機に、各時代の議論を深めるとともに、武士の集団を通時的に捉える見方や、日本社会で生まれる組織のあり方を考える議論につなげることができれば幸いです。(編集委員会)
   *  特集にあたって 編集委員会
 論   文  戦国期における「家中」の形成と認識―大友分国を事例に― 
“Kachu” in the Sengoku Period, Its Formation and Concept
村井良介
MURAI Ryosuke
 論   文  近世前期の牢人召抱えと大名家中
Employment of Ronin and the “Kachu”System in the Early Modern Period
兼平賢治
KANEHIRA kenji
 論   文  近世大名家内部における「家」々の結合とその共同性
Communal Ties between Daimyo's House and his Vassals' Houses in Early Modern Japan
藤方博之
FUJIKATA Hiroyuki
 論   文  海防軍役と大名家臣団―天保〜嘉永期の萩藩軍事改革―
Coastline Defense Duties and Vassals of the Hagi Mori Clan
上田純子
UEDA Junko
 論   文  近世・近代移行期における藩主像の変容と君臣関係―米沢藩を事例として―
Changing Images of Ancestral Lords and Daimyo-Vassal Relations Before and After the Meiji Restoration
友田昌宏
TOMODA Masahiro
 投   稿  戦国大名北条氏の郷村支配と「小代官」 
Village Rule under Sengoku Daimyo, the Hojyo Clan and “Kodaikan”
銭静怡
Jing Yi Qian
 書   評  塩出浩之著『越境者の政治史』 
飯島真里子
 書   評  朴敬玉著『近代中国東北地域の朝鮮人移民と農業』
湯川真樹江
 書   評  梅村卓著『中国共産党のメディアとプロパガンダ』
鈴木航
 紹   介  永野善子『日本/フィリピン歴史対話の試み』
鈴木伸隆
 会   告  歴科協創立50周年記念事業募金協力のお願い 歴科協創立
50周年記念
事業企画委員会
 会   告  創立50周年記念シンポジウムのお知らせ 歴科協創立
50周年記念
事業企画委員会
 

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