『歴史評論』2016年8月号(第796) Historical Journal(REKISHI HYORON) August 2016 vol.796

特集/ジェンダーから見た「戦後日本」  Gender History of “PostWar Japan”

定価 885円  編集長ブログも随時更新中。



 今年(2016年)は女性参政権付与後、最初の衆議院議員選挙が実施されてから、70年目にあたります。この出来事は、日本人から見れば、男女平等の選挙権が実現し、女性議員の誕生をもたらしたと解釈できます。一方で、当時日本に在住していた朝鮮人・台湾人男性にとっては、参政権の喪失を意味しました。同じ事象でも視点を変えれば、歴史の記述は大きく異なります。
 ジェンダー史はマクロな出来事だけでなく、個人間のミクロな関係性をも問います。そして、一人ひとりにとっての事実の意味≠ノ隔たりがあることを明らかにします。こうしたジェンダー史の到達点は、現状の性差別に怒り、女性の立場から過去を再検証することで従来の歴史像を刷新しようとした女性史の軌跡の上に成り立っています。
 本特集号では戦後日本、とりわけ占領期から1960年代の時期を対象とし、軍事、労働、家族、セクシュアリティ、メディアに現れた事象をもとに、人びとの経験をジェンダーの視点から再検討しました。それにより、戦後史において見逃されてきた経験をすくい上げ、より重層的なジェンダー史叙述を目指しました。
 過去を再解釈することは、現在のジェンダーをめぐる矛盾や問題点を浮き彫りにすることにも繋がります。本特集がそれらの課題解決に向けた足がかりの一つとなれば幸いです。 (編集委員会)
   *  特集にあたって 編集委員会
 論   文 女性史・ジェンダー史の展開と転回 ―『歴史評論』「女性史特集」から探る―
Historiography of Women's History and Gender History
酒井  晃
Sakai Akira
 論   文 米軍占領下の日本におけるジェンダー・ポリティクス ―性暴力・性売買・「親密な交際」―
Gender Politics in the U.S. Occupied Japan,1945-1952
平井 和子
Hirai Kazuko
 論   文 敗戦と「男らしさ」の危機 ―戦争と性の道徳的・科学的言説と男性性の再編成―
Defeat in War and Crisis of Masculinity in Postwar Japan
中村 江里
Nakamura Eri
 論   文 在日朝鮮女性の歴史叙述に向けて
Towards a Historiography of Zainichi Korean Women
宋  恵媛
Song Hyewon
 論   文 男性同性愛の戦後史研究とジェンダー
Gender Asymmetries and Historical Studies of Male Homosexuality in Postwar Japan
前川 直哉
Maekawa Naoya
 歴史の眼
 (リレー連載)
―現代日本に痛覚はあるか@―
連載を始めるにあたって

編集委員会
 歴史の眼
 (リレー連載)
―現代日本に痛覚はあるか@―
格差社会認識の定着は何をとらえ何を見失ったか

中西新太郎
 文化の窓 共生社会実現のために ―前近代日本史学徒のパリ体験D―
大橋 幸泰
科学運動通信 2015年度の陵墓立会調査の所見―野口王墓古墳(天武・持統檜隈大内陵)―
白谷 朋世
 書   評 勝浦令子著『孝謙・称徳天皇』
荒木 敏夫
 書   評 小林伸二著『春秋時代の軍事と外交』
小寺  敦
 書   評 稲葉継陽・今村直樹編著『日本近世の領国地域社会』
渡辺 尚志
 書   評 足立洋一郎著『報徳運動と近代地域社会』 
早田 旅人
    * 2.11集会―各地の記録A 
堀田慎一郎
安東  峻
杉田  義

 会   告 歴科協創立50周年記念事業募金協力のお願い
歴科協創立50周年記念
事業企画委員会

 会   告 会費口座振替に関するお知らせ
歴史科学協議会
 

戻る