『歴史評論』2016年4月号(第792) Historical Journal(REKISHI HYORON) April 2016 vol.792

特集/越境空間から読み解くアメリカ “Transnational Entanglements in American History”

定価 885円  編集長ブログも随時更新中。


 近年、歴史研究の「国際化」が急速に進展しています。情報通信技術の発達によって、各地域の研究者は、研究成果を世界規模で発信・共有できるようになりました。歴史学を取り巻くこのような環境の変化を背景として、「国際的視点」を導入した研究が続々と発表されています。これらの研究は、多くの場合グローバル、トランスナショナル、インターナショナルといったことばを用いながら、従来の国民・国家史とは異なる、新しい分析枠組を構築しようとしています。では、歴史学の「国際化」は研究の発展にどのように寄与するのでしょうか。「国際的視点」を取り入れることで、私たちの歴史理解はどのように変わっていくのでしょうか。本特集はアメリカ史の諸事例を検証しながら、歴史研究の国際化がはらむ方法論上の課題と可能性を明らかにします。
  本特集は、人・制度・思想の国境を越えた結びつきを主題とします。北米大陸を含むさまざまな地域にまたがって張り巡らされた、こうしたネットワークが織りなす越境空間に注目することで、アメリカ史の諸問題に新たな光を当てます。そして、安易に国際的な「装い」をまとうのではなく、真に国際的な視点から歴史を描くためにはどのような方法がありえるのかを、具体的な事例の分析を通じて提示します。トランスナショナル・ヒストリーが一過性の流行に終わらず、精緻な方法論に基づいてさらなる発展を遂げるために、本特集の議論が貢献できれば幸いです。(編集委員会)
 
   *  特集にあたって 編集委員会
 論   説 広域圏・国際連関・越境空間―国際的視座の課題と展望
Macroregion, Connection, and Transnational Space: Major Problems in Transnational History
牧田 義也
Makita Yoshiya
 論   説 アイルランド人貧困層の国際移動
The International Migration the Irish Poor
廣田 秀孝
Hirota Hidetaka
 論   説 日本人漁民の国際移動と共同体形成
Migration and Community Formation among Japanese Fishermen
今野 裕子
Konno Yuuko
 論   説 南アフリカにおけるアメリカ南部黒人教育の受容
Contours of Adaptation: American Black Education in South Africa
上林 朋広
Kanbayashi Tomohiro
 論   説 アメリカ・ユダヤ人委員会とイスラエル―建国の余波のトランスナショナル・ヒストリー
The American Jewish Committee and Israel
小阪 裕城
Kosaka Yuuki
 歴史のひろば 歴史はなぜ「暗記科目」と言われるのか―山田智氏への反論
加藤 公明
 文化の窓 『レ・ミゼラブル』―前近代日本史学徒のパリ体験C
大橋 幸泰
 書   評 吉田歓著『日中古代都城と中世都市平泉』
仁藤 敦史
 書   評 森下徹著『近世都市の労働社会』
佐藤正三郎
 書   評 マイケル・ハワード著/馬場優訳『第一次世界大戦』
小関  隆
 書   評 宇吹暁著『ヒロシマ戦後史』
住友 陽文
 紹   介 今泉隆雄著『古代国家の東北辺境支配』
森田喜久男
 紹   介 久保田貢著『知っていますか? 日本の戦争』
平井美津子
 紹   介 安藤正人・久保亨・吉田裕編著『歴史学が問う公文書の管理と情報公開』
松田  忍
 会   告 歴科協創立50周年記念事業募金協力のお願い
歴科協創立50周年
記念事業企画委員会

 会   告 『歴史評論』800号記念特集への投稿のお願い
『歴史評論』編集委員会
 

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