『歴史評論』2016年3月号(第791) Historical Journal(REKISHI HYORON) March 2016 vol.791

特集/安倍政権の教育政策と歴史教育の未来 “Educational Policies of the Abe Administration and the Future of History Education”

定価 885円  編集長ブログも随時更新中。


 2012年12月に再び首相の座に就いた安倍晋三率いる政権は、アジア・太平洋戦争敗戦後に日本国憲法の理念のもとで構築してきた様々な社会の仕組みを破壊しようとしてきました。昨年、多くの国民の声を無視して成立させた戦争法案に他ならない「安全保障」法制はそれを代表するものです。あわせて、政治が積極的に教育の場に介入していることも見過ごせません。そもそも、愛国心教育条項を含む現行教育基本法は、第一次安倍政権のもとで成立したものでした。昨年6月、文部科学省が、全国の国立大学に対し人文社会系学部・学科の縮小・廃止を求めたことも記憶に新しいところです。教育を媒介に為政者の良しとする価値観を国民に植えつけようとする安倍晋三とその周辺の人びとの思惑は、「教育再生」の名の下、いま着々と現実のものになろうとしています。
 本特集では、第二次安倍政権発足後の教育政策にこめられた政権当局者の意図と、「アクティブ・ラーニング」や高等学校への「歴史総合」導入などに内在する両義性を明らかにします。それを通して、安倍政権の教育政策が、歴史教育のあり方にどのような影響を与えて来たか、そして今後与えうるかを考えていきたいと思います。
 私たちの先輩たちが、苦心して築きあげて来た戦後の歴史教育の成果を、「改憲」も含め、油断ならない情勢のもと、どうしたら良い形で次の世代に引き継いでいくことができるか。読者の皆さんと考えていく契機となれば幸いです。(編集委員会)
                     
   *  特集にあたって 編集委員会
 論   説 安倍政権の教育改革と政策の特徴
Critical Issues of Educational Policies by Prime Minister Shinzo Abe
佐藤  学
SATOU Manabu
 論   説 新自由主義教育改革の新段階と教育人権 ―安倍教育再生実行改革による新教育基本法の再始動―
Right to Education under the New Stage of Neo-Liberal Education Reform Resumed by the Second Cabinet of Abe
世取山洋介
YOTORIYAMA Yousuke
 論   説 歴史教育の改めての危機
Rediscussing the Crisis of History Education in Japan
小国 喜弘
KOKUNI Yoshihiro
 論   説 アクティブラーニングという眩惑
The Vertigo of ‘Active Learning ’
今野日出晴
KONNO Hideharu
 論   説 歴史修正主義と教科書問題―2015年採択の中学校社会科教科書をめぐって―
Historical Revisionism and Japanese History Textbook Controversies
加藤 圭木
KATOU Keiki
 歴史のひろば 関東大震災時の朝鮮人虐殺事件をどう記憶し伝承していくか
新井 勝紘
 文化の窓 「素顔の」ソウル大学校(1)―ソウル便り 第1回―
池   亨
 書   評 櫛木謙周著『日本古代の首都と公共性』
浅野  充
 書   評 平川南『律令国郡里制の実像』上・下
亀谷 弘明
 書   評 早田旅人著『報徳仕法と近世社会』
大藤  修
 書   評 吉村豊雄著『日本近世の行政と地域社会』
木越 隆三
 書   評 安達宏昭著『「大東亜共栄圏」の経済構想』
河西 晃祐
 紹   介 鈴木靖民・川尻秋生・鐘江宏之編『日本古代の運河と水上交通』
森田 喜久男
 会   告 『歴史評論』800号記念特集への投稿のお願い
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 会   告 歴科協創立50周年記念事業募金協力のお願い
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