『歴史評論』2015年9月号(第785) Historical Journal(REKISHI HYORON) September 2015 vol.785

特集/歴史の中の親子・家族―婚外子・親子関係をめぐって “Parent, Child, and Family in History”

定価 885円  編集長ブログも随時更新中。



 2014年1月、法務省は、性同一性障害者の父子関係を認める最高裁決定を踏まえ、「嫡出子」とする通達を出しました。また、2013年12月、婚姻届を出していない男女の間に生まれた子(「婚外子」)の遺産相続の取り分を、婚姻届を出している男女の子(「婚内子」)の半分とした規定を削除する民法改正が成立しました。同年九月の最高裁での違憲判決の結果の改正です。婚外子遺産相続差別を規定した明治時代の旧民法から、115年ぶりに、やっと改正されたのです。
 しかし、出生届に嫡出子か婚外子かを記載するよう義務づけた戸籍法規定の削除は、「結婚制度の否定につながる」と主張する自民党などからの反対で成立しませんでした。明治以降の戸籍制度は、「子の権利保護」に違反する規定が多く、妻のみに課せられる離婚後300以内再婚禁止規定による無戸籍児も問題になっています。差別はまだ解消されていません。
 今、母娘関係の確執、あるいは代理出産、人工授精等の生殖補助医療等々、近代家族の親子関係が、様々な局面で揺らいでいます。経済的要因による晩婚化・非婚化を背景に若者の単独世帯が増加し、少子化要因のひとつにもなっています。また、同性婚の問題もあります。希望しても親子関係が構築できない男女が多くなったのです。さらに、一人親世帯の経済問題や育児不安も増加しています。親子関係の歴史的変容を検討することで、現在の多様な家族や親子関係を考えるきっかけになればと思います。(編集委員会)
  *  特集にあたって 編集委員会
  論  説 中国古代家族史研究の現状と新たな課題
A New Perspective on Studying Family History of Ancient China
多田麻希子
TADA Makiko
  論  説 日本中世後期の触穢と親子
The Notion of Kegare and the Parent-Child Relationship in Japan in the Late Medieval Period
片岡 耕平
KATAOKA Kohei
  論  説 臨時法制審議会の民法改正要綱における「家」の強化論―家族関係の再編と法律婚主義
The Reform of the House -Transformation of the Family Relation and Illegitimate Child
蓑輪 明子
MINOWA Akiko
  論  説 フランスの家族法改正―半世紀の歩み
French Family Law: Legal Reform in the Last Half Century
林  瑞枝
HAYASHI Mizue
  論  説 家族法判例の変遷における婚外子
Legal Precedents about the Non-Marital Child in Japan
渡邉 泰彦
WATANABE Yasuhiko
  論  説 「竹島は日本固有の領土である」論
A Critical Reading of The Opinion of "Takeshima is an Inherent Part of Japanese Territory"
池内  敏
IKEUCHI Satoshi
 文化の窓 フランスの日本史講義―前近代日本史学徒のパリ体験@
大橋 幸泰
  書  評 和田晴吾著『古墳時代の葬制と他界観』
日高  慎
  書  評 原田敬一著『兵士はどこへ行った』
千地 健太
  書  評 早瀬晋三著『フィリピン近現代史のなかの日本人』
カール・イアン・ウィ・チェン・チュア
(訳:岡田 泰平)

  追  想 大正デモクラシーの実証的研究の先駆者―追悼・松尾尊~先生
井口 和起
 

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