『歴史評論』2015年8月号(第784) Historical Journal(REKISHI HYORON) August 2015 vol.784

特集/日本の敗戦から70年 “70 Years Since Japan’s Defeat”

定価 885円  編集長ブログも随時更新中。


 例年になく気が重い夏となりそうです。日本の敗戦から70年となる今年、国会では安倍政権が自衛隊の海外での武力行使を可能にする「安全保障」関連法案の成立を強行しようとしています。この動きは、近現代の無謀な侵略戦争と植民地支配への反省に立ち、まがりなりにも非戦と平和主義を貫いてきた戦後日本の歩みに逆行するものと言わざるを得ません。同時に、この動きを側面から支える様々な力が作用していることにも注意が必要です。例えば、昨年来の「慰安婦」報道をめぐる朝日新聞への異常極まるバッシング、改悪された教科書検定基準・教育委員会制度のもので行われる中学校歴史教科書の採択、戦後70年をめぐる「安倍談話」――。今こそ私たちは、歴史の負の側面を否定し書き替えようとする動きと対決しなくてはなりません。
 いっぽうで、戦争体験世代の今後ますますの減少が避けられないなか、戦争の記憶、戦争責任、植民地支配責任を次の世代にどのように引き継ぐのか、歴史学にとっても困難な課題に直面しています。そこで、いまあらためて戦後70年のなかで積み残しにされてきた諸問題に向きあい、現時点での研究の到達点を確認しつつ今後の課題を展望するために本特集を企画しました。
 「いつか来た道」をもう歩いているのかもしれない、そう悲観する前にできることは何か。悲観を希望にかえてゆくための芽を本特集のなかに見出していただけると幸いです。   (編集委員会)
  *  特集にあたって 編集委員会
  論  説 戦争責任論の現在と今後の課題 ―戦争の〈記憶〉の継承の観点から―
Problems of War Responsibility Theory : The Present and Future
山田  朗
YAMADA Akira
 論  説 植民地支配責任論の系譜について
Constructing a Genealogy of Colonial Responsibility
板垣 竜太
ITAGAKI Ryuta
 論  説 日本軍「慰安婦」研究の現状と課題
Current Issues and Challenges of Studies on “Comfort Women” in the Japanese Military
林  博史
HAYASHI Hirofumi
 論  説 深まる日中歴史認識の相剋―歴史認識共有の基盤をどこに見出すか―
How Can Japan and China Find a Common Ground for Understanding Modern History?
伊香 俊哉
IKO Toshiya
 論  説 戦後社会と象徴天皇制―明仁天皇と美智子皇后に焦点をあてて―
The “Symbolic Emperor” System in Postwar Japanese Society
河西 秀哉
KAWANISHI Hideya
歴史のひろば 第4回地域史惣寄合「地域の全体史と現代」
塚田  孝
 歴史の眼 教科書はだれのものか ―平成26年度検定をめぐって―
山田 耕太
科学運動通信 「朝日新聞問題を通して考える「慰安婦」問題と日本社会・メディア」参加記
水野奈々実
 書  評 篠川賢・大川原竜一・鈴木正信編著『国造制の研究』
長谷部将司
 書  評 小林隆道著『宋代中国の統治と文書』
平田 茂樹
 書  評 谷口央著『幕藩制成立期の社会政治史研究』
平井 上総
 書  評 檜皮瑞樹著『仁政イデオロギーとアイヌ統治』
榎森  進
 書  評 照屋信治著『近代沖縄教育と「沖縄人」意識の行方』
高江洲昌哉
 書  評 栗田禎子著『中東革命のゆくえ』
田浪亜央江
   * 2.11集会 ―各地の記録A―
亀谷 弘明
堀田慎一郎

 

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