『歴史評論』2015年7月号(第783) Historical Journal(REKISHI HYORON) July 2015 vol.783

歴史資料をつなぐ人びと “Historical Documents and Their Keepers”

定価 885円  編集長ブログも随時更新中。



 歴史資料は、過去を検証し未来への指針を考えるうえで欠かせないものです。学術研究の基盤に限らず、民主主義の基礎でもあり、人々のアイデンティティや文化の源泉ともなります。
 歴史資料の形態は、無形・有形を問わず多種多様ですが、その「モノ」だけではなく、歴史資料の「残り方」それ自体もまた、ひとつの文化といえます。たとえば、日本列島には多くの地域で、民間に膨大な文字資料が残されています。それは、多くの研究が明らかにしているように、近世以降の日本社会において、文書行政やその管理体制が整備され、村がそれらを保管し利用してきた有り様を反映しています。同様の視点を世界に転じれば、本特集で取り上げた諸事例のように、それぞれの時代・地域で、歴史史料にかかわる様々な人々の姿を見いだせるでしょう。しかし、歴史資料は漫然と現在に受け継がれてきたわけではありません。そこには、さまざまな人々の手が加わってきました。歴史資料を残そうという強烈なモチベーションによるものもあれば、あえて改変が加えられる場合もあります。いずれにせよ、歴史資料は自明のものとして「ある」のではなく、「なる」ものなのです。
 今後も、わたしたちが歴史資料を未来へとつないでいくために、歴史資料がいかに受け継がれてきたかを知ることは重要です。歴史資料の「残り方」に地域を超えて焦点をあてた本特集が、そのことを考えるひとつのきっかけになればと思います。(編集委員会)
  *  特集にあたって 編集委員会
 論  説 日本社会における地域歴史資料を未来につなぐことの意味 ―歴史資料ネットワーク結成20年、大規模災害の中で考える―
Connecting Local Historical Documents to the Future: Japan’s Case
奥村  弘
OKUMURA Hiroshi
 論  説 河南省榮陽の金元時代の石刻史料
Inscriptions in Xinyang (Henan Province) around Jurchen-Mongol Period
山本 明志
YAMAMOTO Meishi
 論  説 内モンゴル自治区のモンゴル語地名の漢字表記にみる政治性
Language Politics in the Inner Mongolian Autonomous Region : Designation of Chinese Characters for Place Names
伊敏(イミン)
Chimed.H.Imin
 論  説 ベトナムの村落と地方文書
Village Communities and Local Documents in Vietnam
上田 新也
UEDA Shinya
 論  説 旧ソ連・中央アジアのウラマー一族と『英知集』
An Ulam?'s Lineage in Central Asia and "Devoni Hikmat"
和崎 聖日
WAZAKI Seika
 論  説 東洋学者とつながるムスリムの知識人
Muslim Intellectuals, Scholars of Orientology and Their Network
磯貝 真澄
ISOGAI Masumi
 論  説 イタリア中世都市の文書庫
Archives in Late Medieval Italy
中谷  惚
NAKAYA So
 論  説 価値を蓄積し続ける地域歴史資料 ―兵庫県三木市・旧玉置家文書を事例に―
Local Historical Documents as a Repository of Diverse Views
三村 昌司
MIMURA Shoji
歴史のひろば ボスニア・ヘルツェゴヴィナ文書館が燃えた日 ―内戦後の歩みの中で―
米岡 大輔
歴史のひろば 書評/藤谷浩悦著『湖南省近代政治史研究』
田中比呂志
   * 2.11集会 ―各地の記録―
柳原 敏明(宮城)
長澤 伸一(京都)
濱田 恭幸(大阪)
杉田  義(奈良)

   * 『歴史評論』第776号掲載論考で発生した問題に対する点検と今後の取り組みについて
一般財団法人歴史科学協議会
『歴史評論』編集委員会

 

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