『歴史評論』2015年3月号(第779) Historical Journal(REKISHI HYORON) March 2015 vol.779

特集/日本中世法慣習研究の現段階 “Customary Law in Medieval Japan”

定価 885円  編集長ブログも随時更新中。


1980年代の「社会史」研究の隆盛は、日本中世史研究を中心に多彩な成果を生みだし、研究全体を活性化させました。なかでも、網野善彦・石井進・笠松宏至・勝俣鎭夫の諸氏による様々な法慣習の発掘は、我々の想像を超える中世社会の不可思議な実態を洗い出すことに成功し、一般読書界にも多くの「中世史ファン」を生み出すことになりました。 それらに対しては、当時の学界では問題意識の相違もあって、その積極性を十分受けとめられない傾向があったことも事実です。そのために「社会史」の成果と問題点は不明確なまま、研究潮流自体も先細りになってしまった感があります。しかし、近年になって、「社会史」研究のなかから、とくに法慣習についての成果を採り上げ、それらの蓄積が日本中世史像を豊かなものにした事実を率直に再評価し、そのうえでその限界点を補正してゆこうとする動きが見ら れるようになりました。 本特集は、そうした新動向を受けとめ、日本中世の法慣習研究につ いて現段階での総括を試みることとしました。かつては呪術性や宗 教性が殊更に強調されてきたそれらの法慣習についても、当時の社 会なりの「合理性」が追究され、概念の使用もより厳密になされる ようになりました。80年代の「社会史」を知る読者も、知らない 若い読者も、この特集を機に、ここ30年の研究の進展をぜひ見届 けてもらいたく思います。           (編集委員会)
  *  特集にあたって 編集委員会
論  説 日本中世「習俗」研究の現在
Studies on Folkways and Mores: A State of Field
清水 克行
SHIMIZU Katsuyuki
論  説 「モノのもどり」をめぐる日本中・近世史研究
"Mono-no-Modori" in the Medieval and Early-Modern Age
長谷川裕子
HASEGAWA Yasuko
論  説 起請文と誓約―社会史と史料論に関する覚書―
Kishomon (Written Pledges) and Oaths: A Note on Social History and Historical Sources
佐藤 雄基
SATO Yuki
論  説 穢・祓の解釈と中世法慣習研究史
Interpretaions of "Kegare" and "Harae" and Historiography on Medieval Customary Law
渡邉  俊
WATANABE Suguru
論  説 家を焼くこと
"To Burn Down a House," Social Punishment in the Medieval Age
井上  聡
INOUE Satoshi
文化の窓 宮崎歴史資料ネットワークの活動と課題―各地の史料ネットからG―
山内 利秋
書  評 河内春人著『東アジア交流史のなかの遣唐使』
廣瀬 憲雄
書  評 佐藤博信著『中世東国の権力と構造』
駒見 敬祐
書  評 大藪海著『室町幕府と地域権力』
山田  徹
書  評 佐々木利和著『アイヌ史の時代へ』
児島 恭子
書  評 松原宏之著『虫喰う近代』
牧田 義也
書  評 阿南友亮著『中国革命と軍隊』
鈴木 昭吾
書  評 手嶋泰伸著『昭和戦前期の海軍と政治』
小池 聖一
 

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