『歴史評論』2014年9月号(第773) Historical Journal(REKISHI HYORON) September 2014 vol.773

債務史研究の可能性をさぐる “History of Financial Obligation”

定価 885円  編集長ブログも随時更新中。


今日、人文・社会科学分野だけではなく、自然科学分野も含め、生産性と豊かさを追求してきた近代的学問の枠組みが問い直されています。経済学の世界では、合理性・均衡・効率性の三原則を追求した論文が評価され量産され続けてきた結果、現実と対峙する学問としての経済学が忘れられたことへの危機感が語られ始めているようです。  そうした中で、経済史学や社会経済史の分野では、旧来の研究対象や分析方法の枠組みを打ち破る新たな研究動向が少しずつ、しかし着実に動き出しています。かつての日本における社会史や網野史学といわれた分野の中からは、消費・贈与・契約や貸借を研究対象とした論考が産み出されるようになりました。ヨーロッパ史の領域でも、質屋や質経済をめぐって、興味深い研究が発表されています。こうした研究の潮流の中から、貸借や債務・債権関係に焦点を当て た、新たな研究対象を見出すことが出来るのではないでしょうか。  本号は、こうした研究動向を踏まえ、近年提唱された「債務史」 という方法によって、新たな研究領域を提唱しようという意図のも とに企画したものです。債務史という方法によってどのように研究 の可能性が拡がりうるのか、日本の中世・近世及びヨーロッパを対 象とした意欲的な論考を集約しました。債務史とは何か。その論点 がさらなる広がりを見せるのかどうかを探りつつ、議論が活性化す ることを期待しています。           (編集委員会)
  *  特集にあたって 編集委員会
論  説 総論―債務史研究の課題と展望―
History of Financial Obligation: A State of Field
井原今朝男
IHARA Kesao
論  説 日本中世の契約社会における債権・債務文書
Historical Documents of Debts and Credits in Contract Society of Medieval Japan
村石 正行
MURAISHI Masayuki
論  説 日本近世農村における債務と証文類
Financial Obligation and Deeds in Rural Communities of Early Modern Japan
荒木 仁朗
ARAKI Jiro
論  説 前近代社会における質屋と質業―比較史の試み―
Pawnbrokers and Pawnbroking in Pre-Modern Societies : A Comparative Approach
マウロ・カルボーニ
Mauro CARBONI
論  説 中世イタリア社会における債務の重み
Social Significance of Debts in Medieval Italy
徳橋  曜
TOKUHASHI Yo
投  稿 イベリア・インパクト論再考―イエズス会の軍事的性格をめぐって―
“Iberian Impact” Reconsidered
清水 有子
SHIMIZU Yuko
科学運動通信 「四月二八日の意味を考え辺野古への基地移設に反対する歴史学関係者の集会」参加記
小山荘太郎
書  評 ジョン・W・ダワー著、外岡秀俊訳『忘却のしかた、記憶のしかた』
川口 悠子
書  評 荻野富士夫著『大学「歴史教育」論』
森谷 公俊
紹  介 河西秀哉編著『戦後史のなかの象徴天皇制』
小山  亮
 

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