『歴史評論』2014年8月号(第772) Historical Journal(REKISHI HYORON) August 2014 vol.772

アジアのなかの戦争遺跡 “Historic Sites of War in Asia”

定価 885円  編集長ブログも随時更新中。


アジア・太平洋戦争で日本が敗戦してから六九年目を迎える今もなお、戦後補償は未解決のままであり、被害者やその遺族からの真相究明や責任追及の声は後を絶ちません。一方、日本では政治家による妄言をはじめ歴史修正主義的な言説が蔓延するなか、戦争や植民地支配の記憶の風化はますます顕著となってきています。しかしながら、地域の戦争を掘り起こし、戦争と植民地支配の歴史を自らの足下からたどっていこうとする息の長い取り組みが、市民の間で地道に行われていることもまた事実です。それらの取り組みは一九五〇年代の広島の原爆ドーム保存運動からはじまり、やがて全国に広がっていきました。「三・一一」の震災遺構の存否をめぐっても、かつての原爆ドームの保存過程を紹介するかたちで世論の関心を集めたことは記憶にあたらしいところです。 本特集では、日本のみならずアジアのなかの多様な戦争遺跡に焦 点を当て、遺跡そのものはもちろんのこと、遺跡が保存されるまで の過程に注目し、地域行政のかかわり方や、時として破壊に追い込 まれるケースにも留意します。そして、自らの足下にある戦争や植 民地支配の歴史と記憶を掘り起こし、とどめようとする人びとの営 みを取り上げます。史実の掘り起こしと戦争遺跡の保存を目指す多 種多様な取り組み、さらには戦争遺跡の現在を紹介することをとお して、次世代への戦争と植民地支配の記憶の継承に向けた議論を喚 起する一助となれば幸いです。         (編集委員会)
   *  特集にあたって 編集委員会
論  説 戦跡保存の取り組みと課題
Preserving War Heritages: The Present Struggle and the Future Challenges
村上 有慶
MURAKAMI Akiyoshi
論  説 戦争遺産の保存と平和空間の生産―原爆ドームの保存過程を通じて―
Preserving War Heritages and Producing Peace Space :Preservation of Genbaku Dome
濱田 武士
HAMADA Takeshi
論  説 陸軍登戸研究所の実相をみつめて―明治大学平和教育登戸研究所資料館設置の意義―
Uncovering the History of the Japanese Imperial Army Institute in Noborito :The Establishment of the Defunct Imperial Japanese Army Noborito Laboratory Museum for Education in Peace
渡辺 賢二
WATANABE Kenji
論  説 戦争記憶の伝達・継承と歴史教育の場としての博物館
Mission of Museum: Keeping War Memories and Promoting History Education
君塚 仁彦
KIMIZUKA Yoshihiko
論  説 マレーシア・中国の慰安所跡を訪ねて
A Visit to Historic Sites of ?Comfort Stations” in Malaysia and China
吉池 俊子
YOSHIIKE Toshiko
科学運動通信 彦根市史問題で争われたこと
上野 輝将
科学運動通信 深草北陵発掘調査公開参加報告
岡野 慶隆
書  評 中砂明徳著『中国近世の福建人』
津坂 貢政
書  評 今井昭彦著『反政府軍戦没者の慰霊』
長南 伸治
書  評 鄭栄桓著『朝鮮独立への隘路』
樋口 雄一
書  評 永江雅和著『食糧供出制度の研究』
高柳 友彦
紹  介 上杉忍著『アメリカ黒人の歴史』
武井  寛
紹  介 安世鴻著『重重』
中嶋 久人
   *  2・11集会―各地の記録
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会  告 会費口座振替に関するお知らせ
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