『歴史評論』2014年7月号(第771) Historical Journal(REKISHI HYORON) July 2014 vol.771

天皇・朝廷からみる近世の国家と社会 “The Emperor and the Imperial Court in Early Modern Japan”

定価 885円  編集長ブログも随時更新中。


日本史上、近世は、天皇がその政治的な地位を最も低下させていた時代でした。それにもかかわらず、ときの政治権力である江戸幕府からは否定されることなく、天皇は存続しました。天皇・天皇制が今日に至るまで、なぜ続いたのかを考えるうえで、近世は、とりわけ重要な意味を持っているといえるでしょう。  戦後しばらくの間は、「皇国史観」への批判もあって、近世の天皇は、権力を喪失した無力な存在とされるのみでした。しかし、七〇年代に国家論が展開する中で、天皇が「権力」というよりは「権威」としてとらえられ、近世の国家史研究の重要な研究対象として位置付けられるようになりました。 こうして、近世の天皇と、それを支える朝廷をめぐる研究は活発化し、今日まで多くの成果が積み重ねられ、政治史はもちろん、身分制史や宗教史・文化史、そして 地域史にも影響を及ぼすに至っています。そこで、本特集では、こ うした幅広い分野にできるだけ目を配りながら、最新の研究動向を 紹介するとともに、当時の天皇・朝廷がいかに存在し、国家と社会 の中でどういう位置を占めていたのかを考えてみたいと思います。 一部の歴史教科書において、当時の天皇・朝廷に対する過大な評 価が行われている近年の状況を踏まえるに、これらについての正確 な知見がいっそう求められているのではないでしょうか。本特集が、 その手がかりとなれば幸いです。        (編集委員会)
   *  特集にあたって 編集委員会
論  説 近世の天皇・朝廷研究の到達点と課題
The Emperors and the Imperial Court in Early Modern Japan: A State of Field
田中 暁龍
TANAKA Toshitatsu
論  説 江戸幕府と朝廷財政
The Tokugawa Shogunate and the Imperial Court: An Analysis from a Financial Standpoint
佐藤 雄介
SATOH Yusuke
論  説 近世公家家職の展開と内侍所神楽
Sacred Music and Dance in the Imperial Palace and the Development of Court Aristocracy
西村慎太郎
NISHIMURA Shintaro
論  説 近世本所の家伝と家職―「陰陽道」像の模索―
The inherited occupation and Onmyodo knowledge :A Case of the Tsuchimikado Family
梅田 千尋
UMEDA Chihiro
論  説 陵墓と朝廷権威―幕末維新期の泉涌寺御陵衛士の検討から―
Imperial Mausoleum and the Authority of the Imperial Court
上田 長生
UEDA Hisao
   *  第四七回大会報告を聞いて
櫻澤誠/大山喬平
文化の窓 資料保全活動の現在―各地の史料ネットからC―
田中 大輔
科学運動通信 ヤマト政権最初期の巨大前方後円墳二基について考える―箸墓古墳と西殿塚古墳への立ち入り観察―
白谷 朋世
書  評 小野容照著『朝鮮独立運動と東アジア』
三ツ井 崇
 

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