『歴史評論』2014年3月号(第767) Historical Journal(REKISHI HYORON) March 2014 vol.767


近年の室町時代史研究においては、室町殿(=現将軍か否かにかかわらず室町幕府の長を指す語) の政治支配に関する精緻な分析が進められ、目覚ましい成果があげられてきました。それらの研究に おいては、室町殿の権力構造をめぐって、軍事・司法・行政といった従来からの研究蓄積がある視点 だけではなく、家格・儀礼・朝廷との関係などといった側面に注目した検討が加えられています。そ の結果、多くの室町殿の支配のあり方が議論の俎上にのせられ、室町時代全体にわたり論点は多彩な 広がりを見せています。
しかしながら、いうまでもなく、室町殿に関する研究のみが室町時代史研究の中心課題ではありま せん。近年の室町殿に関する研究の蓄積を高く評価しつつも、あらためて社会経済史・文化史を含む 多様な問題をとりあげることで、室町時代史像をより豊かにするこ とができるのではないでしょうか。本号の特集は、そのような問題 意識にもとづいたものです。
具体的には、荘園制・朝廷制度・法制度・境界・芸能をテーマに とりあげ、「室町時代とはどのような時代であったのか」という問題 を深めるために、最新の研究動向を総括する論考を収めました。も とより、これによって論点が尽くされているとは考えませんが、室 町時代史に関する議論のさらなる活発化に寄与することを期待して います。                    (編集委員会)
  *  特集にあたって 編集委員会
論  説  室町期荘園制論の課題と展望
Perspectives on the Muromachi Shoen System
伊藤俊一
ITO Toshikazu
論  説  法制史における室町時代の位置 
The Muromachi Period in Legal History
松園潤一朗
MATSUZONO Junichiro
論  説  室町時代の境界意識
The "Boundary Awareness" in the Muromachi Period
黒嶋敏
KUROSHIMA Satoru
論  説  室町期芸能史研究の現在
The History of Performing Arts in the Muromachi Period: A State of the Field
辻浩和
TSUJI Hirokazu
投  稿  懋勤殿開設案と外国人顧問招聘策
―対外連携策の果ての戊戌政変―
Proposed Opening of the Maoqin Dian and Policy of Hiring Foreign Councilors
宮古文尋
MIYAKO Fumihiro
書  評  赤澤春彦著『鎌倉期官人陰陽師の研究』
遠藤珠紀
書  評  本城正徳著『近世幕府農政史の研究』
武井弘一
書  評  佐藤孝之著『近世山村地域史の研究』
坂本達彦
追  想  山口啓二氏を偲ぶ
塚田孝
会  告  「YOSHIMI裁判いっしょにアクション」への入会を呼びかけます
   
 

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