『歴史評論』2014年2月号(第766) Historical Journal(REKISHI HYORON) February 2014 vol.766

大正デモクラシー再考 “"Taisho Democracy" Revisited”

定価 860円  編集長ブログも随時更新中。


 「大正デモクラシー」という視角からの研究はアジア太平洋戦争後に始まり、1960年代後半から70年代前半にかけて隆盛を迎えます。それも多種多様な視角から研究が行われた結果、様々な新しい発見が行われ、他分野の研究にも大きな影響を与えました。しかし、1970年代半ばに百家争鳴的な状況を迎えた「大正デモクラシー」研究ですが、1980年代以降はそもそも一般理論(グランドセオリー)や哲学的視点から歴史全体の意味を問おうとする研究が下火となり、研究は個別細分化する傾向を強めます。「大正デモクラシー」を本のタイトルに冠したもの自体が少なくなり、たとえあったとしても、「大正デモクラシー」現象全体を真正面から扱うような研究はほとんどなくなります。
 しかしながら、今まで蓄積されてきた知見ないし豊饒な世界観をこのまま捨て去ることは許されません。特に、「大正デモクラシー」研究隆盛の背後に、戦後民主主義に対する同時代の危機意識があり、その危機が近年さらに深まっている以上、「大正デモクラシー」を再考することには意味があると考えます。
 本特集では、近年新たな視角から進展した研究をふまえて、現時点で「大正デモクラシー」を再考したら、どのような結論が得られるのかを考えてみたいと思います。本特集が新たな研究視角や課題の発見につながる契機となれば幸いです。(編集委員会)
   *  特集にあたって 編集委員会
 論  説  研究史整理と問題提起 ―1960〜70年代を中心として―
Historiographical Issues on "Taisho Democracy"
千葉  功
CHIBA Isao
 論  説  デモクラシーのための国体 ―「大正デモクラシー」再考―
"Kokutai" for Japanese Democracy in the Taisho Era
住友 陽文
SUMITOMO Akifumi
 論  説  大正デモクラシーと紡績労働者
Reconsidering "Taisho Democracy" from the Point of View of Textile Workers
三輪 泰史
MIWA Yasushi
 論  説  「大正デモクラシー」と国民国家 ―第一次世界大戦期の『横浜貿易新報』社説から―
"Taisho Democracy" and the Nation
加藤千香子
KATO Chikako
 論  説  大正期の部落問題論と解放運動 ―支配の正統性と全国水平社の創立をめぐって―
Discussions on Buraku Issues and the Liberation Movement in the Taisho Era
関口 寛
SEKIGUCHI Hiroshi
 歴史の眼  安倍政権の「教育再生」政策は教科書をどう変えようとしているのか
俵  義文
科学運動通信  「シンポジウム 歴史教科書 いままでとこれから PART\」参加記
新川 綾子
 書  評  池上裕子著『日本中近世移行期論』
牧原 成征
 書  評  藤田和敏著『近世郷村の研究』
夏目 琢史
 書  評  村和明著『近世の朝廷制度と朝幕関係』
野村  玄
 書  評  星野靖二著『近代日本の宗教概念』
北浦 康孝
   *  2014年度 歴史科学協議会総会報告
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