歴史科学協議会

『歴史評論』２０１４年１月号（第７６５） Historical Journal(REKISHI HYORON)　January 2014 vol.765

キリスト教と近現代中国地域社会史　“Christianity and Local Community Histories in Modern China”

定価　８６０円 　編集長ブログも随時更新中。

　中国史におけるキリスト教研究といえば、かつてはミッション研究、すなわち布教の進み具合を宣教師の立場から描くものか、もしくは信者と地域住民との衝突、いわゆる教案の研究が主流でした。これに対して一九八〇年代に入ると、中国人信者の動向が研究者の視野に入ってきました。そして近年では、北京や天津、上海といった個別地域の教会史や、また教会の慈善活動をテーマとする研究がにわかに活況を呈しはじめ、とりわけ中国で専門書の刊行が相次いでいます。
　本特集は、このような先行研究の到達点を踏まえつつ、中国史上におけるキリスト教信者コミュニティの動向およびその周辺事象を分析の基軸に据えることによって、それぞれに大きく異なる歴史的背景と地域的特性をもつ中国沿海の諸地区を、共通の基準から比較・検討するものです。
　研究対象時期は、近代にいたってキリスト教がふたたび流入しはじめる一九世紀中葉から、それがひとまず定着する二〇世紀初頭までを中心としつつ、近代中国全般にわたります。また、本特集では、中文史料に比して十分には活用されてきたとは言い難い欧文の宣教師文書や新たに整理された中文史料の紹介を行い、今後の可能性を示している点も特徴です。これと関連して、「基本文献・所蔵機関案内 」を設けてもっとも基礎的な研究文献や所蔵機関の紹介を行い、関心をもつ読者に供することにしました。本特集が関連研究に裨益する論点を提示することができれば幸いです。（編集委員会）