『歴史評論』2013年10月号(第762) Historical Journal(REKISHI HYORON) Oktober 2013 vol.762

君主制とイメージ “Monarchies and Images”

定価 860円  編集長ブログも随時更新中。


 二〇一一年三月の東日本大震災に際し、天皇明仁は、ビデオを通じて被災地にメッセージを送り、自ら避難所を訪ねて被災者を慰問しました。翌年イギリスでは、女王エリザベス二世の在位六〇年式典が盛大に執り行われ、本年にかけては、その孫ウィリアム王子の結婚・出産が話題を集めています。今なお君主制は、さまざまな形で人びとの意識や生活に関わり、影響を与えつづけているといえます。
 日本の天皇制については、一九九〇年代以降、「昭和」の終焉によって公開された史料も多く、現在に至るまで政治過程にかかわる実証研究が進展してきました。しかし一方で、多様な方向に深化した研究全体を統括する理論的整理の必要性が指摘されています。一九八〇年代以降に大きく進展し、近年精緻化を見せている君主制とイメージをめぐる研究潮流は、そうした君主制の全体像の把握のためにも、避けて通ることのできないものだといえるでしょう。
 本特集は、君主制とイメージにまつわる問題を日本・朝鮮・イギリスを事例に、さまざまな題材から検討するものです。ここでいうイメージは、為政者や君主らにより展開される視覚的な要素はもちろん、それらを通して社会のさまざまなレベルにおいて抱かれる印象などをも含むものです。これらの検討により、それぞれの時代や地域における君主制の諸問題が浮き彫りになるでしょう。
 本特集が、近現代の君主制をめぐる歴史研究の今後を展望する契機となれば幸いです。(編集委員会)
   *  特集にあたって 編集委員会
 論  説  「二人の女王の物語」―在位記念式典に見る君主制の変質
A Tale of Two Queens
井野瀬久美恵
INOSE Kumie
 論  説  保護国下大韓帝国皇帝儀礼の展開
Court Rituals of the Korean Emperor under the Japanese Protectorate
小川原宏幸
OGAWARA Hiroyuki
 論  説  1928年「昭和大礼」と写真報道―大礼使による撮影規定とその運用を手がかりに
Photojournalism in 1928 Showa Accession Ceremonies
小山  亮
KOYAMA Ryo
 論  説  弘前の秩父宮―戦中期地域社会における皇族イメージの形成と展開
Chihibu-no-miya in/of Hirosaki
茂木謙之介
MOTEGI Kenosuke
 論  説  戦略としての表象分析―《八紘之基柱》を読むということ
Representation Analysis as Strategy
千葉  慶
CHIBA Kei
 投稿論文 朝鮮人の倭館[亡命」事件にみる日朝関係―1836年「南必善一件」を事例として
Japan-Joseon Relations in the “Defection”Case to Waegwan
酒井 雅代
SAKAI Masayo
科学運動通信 史料保存利用問題シンポジウム
「東日本大震災から2年、資料の救済・保全のこれから」

木村由美子
 書  評  高橋慎一朗・高橋典幸・末柄豊著『Jr.日本の歴史3』
田中 大喜
 会  告  新しい会費制度の導入について
歴史科学協議会
 

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